第11話死体VS神蜘蛛
「ァァァァァァ…」
見た目は、ぱっと見人の様だ、だがよく見ると、肌は青白く、生気がない。なんだろう…ゾンビ、そうゾンビの様な見た目だ。そして最も目につくのは、額に貼り付けられたお札?だ。格好もどことなくチャイナ服味を感じる。
「あれはなんですの!?あの不気味なモンスターはなんなんですの!?」
青白い肌のモンスターの接近にフォンデュは思わず息を呑む。
「あれ…は、ワタシも、その、あの…えっと、見たことが…なくて…、でっ!でも!たっ…多分、未確認の、モンスターだと、思い…ます……」
アンナはオドオドと見解を伝える。
『アンナ!フォンちゃん!』
「フォンちゃん!?」
『あのモンスター!爆速で向かってきてるよ〜!』
アラクネの警告に、フォンデュ達の視線は咄嗟にモンスターの所に向く。モンスターは、その見た目では想像もつかない程にものすごい速度で、地面を蹴って近づいてきていたのだ。
「アラクネっ、よろ、しく!」
『はいはい任せんしゃーい!』
アンナの合図を受け、アラクネは動き出す。アラクネの蜘蛛の尻から発射されるのは蜘蛛の糸、その糸はアラクネの意思に応じて自在に材質を変えることができる。
『即席作成!鉄格子!!』
次の瞬間、アラクネから発射され、形を形成した蜘蛛の糸は、その姿を露わにする。
鉄のワイヤーのようなもので出来たネット。それがモンスターの上部に形成されていた。
―――――――
モンスターの頭上で形成されたネットは、落下と同時にそのモンスターを捕らえた。すると、ネットはさらに形を変え今度はモンスターを縛り上げる縄となった。
「ァヴァヴァァァァァァ!」
縄で縛られても尚暴れ続けるモンスターだが、一安心…とフォンデュ達は縛られているモンスターの元に近寄って行く。
「近くで見るとより躍動感がありますわね…」
「あ…危ない、からあまり、近寄らない…で…」
フォンデュはモンスターをまじまじと眺める
「この見た目…どこかで見たような気がしますわ…」
思考を巡らせ、記憶を辿る。そして一つの結論に辿り着いた。
「あ!この見た目、キョンシーってやつですわ!」
「キョン、シー?」
アンナは首を傾げる
「死体が動いているんですのよ!」
フォンデュは簡潔に説明をした。すると…
「ァァァァァァヴァォァー!」
キョンシーがさらに暴れ出す。縄を振り解こうとする。
『あ!こっ、このぉ!大人しくしてなさいっての!』
アラクネはさらに、拘束を強める。ギリギリ、ギリギリと。
しかしそれが逆に思いもよらぬ事態を引き起こした。
ーーバキィ!
痛覚がない死体は、その程度では止まろうとしなかった。骨が折れて、身体が変な方向に曲がっても、争い続ける。バキ、ボキと鈍い音が響き続ける、そうしてとうとう凄まじい負荷に耐えきれなくなったキョンシーの肉体が、腰から真っ二つに引きちぎれた。
「マジですわ!?自分を真っ二つにしてまで逃げますの!?」
フォンデュは驚愕する。そんなフォンデュの驚きも束の間、キョンシーの下半身と上半身は、それぞれ動きだす。両方の腰からは、紫色の鉄臭い液体が、流れ出ていた。しかしその液体の流動はすぐに肉片の躍動へと変わって行く。
滴る液体から、肉片が形成されて行く。上半身からは下半身、下半身からは上半身が、みるみる生えてくる。
ものの数秒もしないうちに、キョンシーは2匹へと増えていた。
『ヒャァ!?2匹になった!?』
2匹のキョンシーはアンナとフォンデュ、それぞれの元へ一体ずつ襲いにかかってくる。
『(これはフォンちゃん守りづらいな…)フォンちゃん!自己防衛よろ!』
アラクネはフォンデュに端的にそう伝え、アンナと目を合わせる
『アンナ!行くよ!』
「う…うん!」
「『神蜘蛛化』」
アンナとアラクネは共鳴し、光に包まれて行く…
―――――――
ほんのちょっとだけ時を遡り、フォンデュは
「自己防衛ですの!?」
フォンデュはいきなりの無茶振りに驚いていた。あのモンスター、キョンシーを単独で相手するのだ。しかも自分はまだ完璧に能力を扱える状態ではない。
「でも…やるしかありませんですものね!」
フォンデュの目の前には、凄まじいスピードで向かってくる一体のキョンシーがいる。
「ァァァァァァ!」
キョンシーは大きく振りかぶってフォンデュを思いっきり爪で切り裂こうとしてくる
「やーーーっぱり無理ですわァァァァァァ!」
そう叫びながらフォンデュはキョンシーの腕を間一髪で受け止める。必死に能力を発動しようとする。
しかし一向に発動する気配がない。
「発動してくださいまし!?早くー!」
焦りに焦る。しかしここで真相に気づく。発動していないんじゃない。発動自体はしている。発動していないんじゃなく、キョンシー自体に生命力が皆無なのだ。
「生きてないからかしら!?」
咄嗟にフォンデュは受けている腕を引き寄せ、キョンシーを蹴り飛ばすことで距離を取る。だがそれも応急処置だ。しばらくしたらまた体勢を立て直したキョンシーが襲いかかってくる。
「どうにか…打開する方法はないかしら…」
フォンデュはそこで、ハッと思い出す。
吸い取った生命力は自身にストックされている、と言うことを。
もはやそれしか方法が思いつかない
「賭けるしかありませんわね…」
体勢を立て直したキョンシーが、再度フォンデュに向かってくる。
「お願いいたしまし!」
フォンデュの拳にものすごいエネルギーが集まっていく。次の瞬間、フォンデュの拳はキョンシーの腹を貫いていた。
説明しよう!フォンデュが思いついた打開策、それは!奪った生命力を自身の強化に宛てる、と言うことだった!フォンデュは今蓄えている生命力全てを使って、キョンシーを攻撃したのだ!!!
―――――――――――
「『神蜘蛛化』」
一方その頃アンナ達は光に包まれていた。
まもなく、光が晴れるとそこには美しくも、悍ましい上半身は人間、下半身は蜘蛛の、【蜘蛛女】がいた。
「『ぶっ倒ー!…します』」
蜘蛛女から響いたのは二重に重なった《声》だった。アラクネの勢いで生きているかのような口調と、アンナのオドオドとした口調が重なって、違和感絶大の口調になっている。
しかし確かな威圧感を含んでおり、それに気押されたのか、キョンシーは一瞬だけ動きを止める。しかしすぐにその痛覚も生命力もない死体は咆哮を上げながら蜘蛛女へと飛びかかる。
「『トロトロ〜!で、楽に…避けられ、ます!』」
蜘蛛女の動きは一瞬だった。まるで閃光のように、その動きづらそうな身体からは想像もできない速さだった。
「『今度は…こっち、からだよ〜!』」
蜘蛛女は8本の足で思いっきり飛び上がると、前方の鎌足から糸を生成する。
「『鋼糸×刃糸 刀断絶糸』」
鎌足から生成された糸は鞭のようにしなやかにキョンシーへ向かっていく。そのまま、キョンシーを細々と細切りにした。
「…激ヤバですわね…」
フォンデュは若干引いたが、すぐ異変に気づく。
細切りにされたキョンシーの肉体が、灰となって散っているのだ。
だが、自分が腹を貫いたキョンシーは灰にならない。ただ、グッタリとして動く様子がなさそうなので、貫いた方のキョンシーは一旦、腕を引き抜いて置いておく事にした。
まもなく、戦闘が終わった蜘蛛女は光の粒子と共に、アンナと、アラクネの2人に、戻った。
『ナーイス!フォンちゃんお手柄ぁ!』
「お疲れ…様、です」
「アンナさん達も、お疲れ様ですわ、それより…」
フォンデュはそっとある場所を指差す。指差したその先にあったものは、腹を貫かれて尚残っているキョンシーの肉体であった。
『あれぇ?おかしいね〜、わたし達の所のキョンシーちゃんは消えちゃったのに…』
「確か…に、そうですね」
『まぁいいや!糸でガッチガチに固めて、作戦室持って帰ろ〜?ちなっちゃんに見せれば何かわかるでしょ!』
「そう、そうしよう…か、」
フォンデュ達一向は、思いもよらぬ戦利品と共に、帰路に着いた。




