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スキルコネクト 〜コミュ力 ゼロ、社会制 ゼロ、の社会不適合者にMMOの壁は高い〜  作者: 発条ザムライ
そらから、きたもの

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コミュ障、本領発揮。

コミュニケーション障害という物をご存じだろうか。


他者との会話が苦手だったり、自分の考えを上手く言葉にできなかったり。

頭の中では理解していても、それを相手へ伝えることができない。

あるいは、何を話せばいいのか分からず、沈黙ばかりが続いてしまう。


俗に「コミュ障」と呼ばれるそれは、決して口下手という一言で片付けられない。


人と関わることに強い不安を抱き、言葉を選びすぎて何も言えなくなり、

たった一度の失敗を何度も思い返してしまう。


そんな、人と人との繋がりの中で生じる様々な困難を指した言葉。

崩して言えば、人と話すのが苦手な人間のことだ。

そして、キクシオはその筆頭である。




心臓が早鐘を打つように激しく鳴る。耳に届くのは自分の鼓動ばかり。

視線は泳ぎに泳ぎまくり、明後日の方向を向いている。けど、顔の向きはしっかりと、相手の方向に行ってるから大丈夫だ。

静かな声が届いた瞬間。いや、気配があった瞬間。反射的に仮面を着けていた。

仮面の詳細は確認したし、たぶんダイジョブだ。というか、仕方がない。人様に見せれる面じゃねえ。


「__ねえ、貴方なんでしょう。好き勝手やった張本人は。」


血液は確かに全身を巡っているはずなのに、脳には酸素が届いていない。頭の中を支配しているのは真っ白な思考だけ。何かを考えようとしても、言葉が繋がらない。文字が1つづつ浮かんで来るが、引っ掛からない。まるで、ザルで水を掬おうとしているみたいだ。


「__そのお面。鬼のお面のようですけれど、おかしいわね。私たちと戦ったモンスターが同じ物を着けていた気がするのだけれど。」


相手が何かを話している。そんな気はする。

口が動いているのも見えるし、声も聞こえているはずだ。けれど、その内容が頭に入ってこない。

言葉として認識する前に、意味のない音として流れて消えていく。というか、相手の目すらまともに見れない。だから視線は相手の肩へ、地面へ、空へと忙しなく逃げ回る。


その時に気づいた。


沈黙が訪れている。__あれ?もしかして、今、こっちの番なのか?

いや、待て待て、そうとは決まっていない。沈黙。それが正解の時だってある。


「…………何か言ってくださる?」


すぅぅぅぅぅぅ。という音が口から漏れる。

聞いてきたということは、こっちが話す番と言うこと、コミュニケーションとはキャッチボールのようなもの、相手が投げた球を受け取って、投げ返す。ただそれだけ。そう、ただそれだけの話だ。

相手がどれだけ剛速球を投げようとも、打ち返せばいい話だ。


「…………いい………天気ですね…………。」


「__はぁ?」


どうだ?決まったか?こちとら、このゲームを始める前に穴が開くほど、教本を読んどるんじゃ!

教本[サルから学ぶあいさつ編]10ページ目。冒頭。『挨拶はさわやかにひと鳴き』から抜粋。

天気デッキだ!

くっくっく。天気晴朗(てんきせいろう)干天慈雨(かんてんじう)雲外蒼天(うんがいそうてん)。様々な天気の四字熟語を例えた。あいさつ集の中で、最もシンプルな奴だ。これに、答えない奴はいないだろう。


「__何を言って………?」


動悸が激しく鳴り続ける。時と場所と状況と現象さえ違ければ、恋だと錯覚してしまう程に胸が高鳴ってる。不整脈のようだ。


「__この状況で天気の話? ふざけてるの?」


__な……なんだと………。聞き返した、だと!


まさか、俺のあいさつ力が、足らないというのか!?

いや、まだだ。俺のあいさつ力は、こんなものじゃねえ。

教本[サルから学ぶあいさつ編]12ページ目。『挨拶の切り返しは裂くような鳴き声』から抜粋。

天気デッキは、まだ続くぜ。雨過天晴(うかてんせい):雨が上がって雲が晴れるように、困難の後には良い状態になる事。から、聞き返しの回答だ。


「…………そのうち………いいこと……あるよ。」


「__へぇぇ……ああ………ハイハイ。なるほどね。私たちが築いた拠点が壊され、瓦礫の山が聳え立ってる。これをやった元凶が、寄りにもよって{”そのうち、いいこと、ある”}ですって?」


血管がブちぎれる音が、響いた。


「__喧嘩売ってるわけね。貴方ぁ? いいでしょう。買ってあげる。」


フッフッフ。俺のあいさつ力が高すぎて、相手に利き過ぎてしまったようだ。

これで、俺はコミュ障ではなくなったわけだ。すまない諸君。先に上で待ってるよ。


「__貴方は、所詮、たった1人のプレイヤー。どうやって化け物を倒したのか知らないけど。」


この場の、雰囲気が変わる。

話し合いで、終わればよかった空間。話し合いですらなかった空間。

片方の意識が変わると同時に、緊張は別の緊張へと変わっていた。


「__私たちはプレイヤーキラー。モンスターではなく、人を狩ることを選んだ者。」


モンスターとの戦い方など知らない。

その代わり――プレイヤーの殺し方なら知っていると。


「__見せてあげる。ゲーム初日から積み上げてきた、私たちの戦場を。」


ゲームが始まった、その日から。

誰よりもプレイヤーを観察し、誰よりもプレイヤーを欺き、誰よりもプレイヤーを殺してきた。


「__プレイヤーキラーとして生きる者だけが辿り着く領域を。」


__さあ――堪能なさい。


その声が__響いた。いや、声に出してない。口パクだ。

けれど、確かに、届いた、その言葉を


認識


する


前に


キクシオの頭を、”()”が、貫いた。

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