色転纏う鬼どもよ。
閏尾の攻撃は、利かなかった。反応すらしてなかった。
けど、俺の攻撃には、反応した。迎撃された。
投擲したナイフを、金棒で振って打ち落とされた。
ナイフの弱点。
耐久力を付かれたわけだ。
ナイフという武器種。特にこの武器は打ち合いに弱い。
耐久力を削って数を増やしてるわけだからな。
だけど、増やせる数には制限がない。MPさえあればどれだけでも増やせることができる。
ナイフを取り出し、増やす。
影が揺れ、刃が増殖する。
「どうゆうことかは、今は置いとけ。」
今はただ。俺の攻撃に反応した事実だけ見ろ。
赤鬼がもう、目の前に迫ってきている。逃げ切れない距離。
だから…………。
「数の暴力を見せてやる。」
両手に増やしたナイフを構え。
まず、右手にあるナイフを投げる。
その後、
左を。
そして、
また、右を投げる
続けて、左を、右をと、続けていく。
投擲するたびに、インベントリからナイフを1つ取り出し、それを増殖させている。
数の暴力。それは何も、人数の多い方が有利に働く言葉ってだけじゃない。
それは、尽きないリソースの数も、暴力足り得るということ。
MPの心配がなくなったため、初めに思いついたのがこれ。
弾薬の無限増殖。
戦闘終了後も、ナイフの影がなくならなかった。
そのため、何処まで増やせるのか気になったが、MPが少ないため断念したが、[魔力操作]で、MPを増やせるため、ナイフを増やし続けていた。
なのだが、インベントリがパンパンになるまで増やせてしまった。
武器の貯蔵は十分すぎる。他のアイテムが取れないくらいだ。
流石の赤鬼も、足が止まる。
迎撃しようと、金棒を振るうが、何せ数が多い。
いくつか打ち漏らし、赤い肌に突き刺さる。
ダメージの入った感覚する。それで、確信する。
「効いている。」
閏尾と俺の違いは何だ?
水球による魔法攻撃だからか、ナイフによる物理攻撃だからか?
投擲の最中でも、閏尾はいくつか水球を赤鬼に向けて放っているが、全て弾かれ背後へ飛ぶ。
スキルによる攻撃の違いか?それとも…………視界に”青い色”が掠める。
__”角”のせいか?
微かな、確信のようなものがする。
”赤い角”を生やした閏尾は、攻撃が通らず、
”青い角”を生やした俺は、攻撃が通り、迎撃されている。
ナイフの投擲は止んでいない。
なるほど、”色違いだとダメージが入る”のか。
それなら、奴の背後、青い仮面にナイフを当てさえできれば、確認が取れるかもな。
あと、問題は、どうやって色を変えるか。
と言うか__。
「………色変えられるのか?」
いつの間にか付いていた”角”。
外し方もわからなければ、付け方もわからない。
色が、無くなった。哭き声の時では、角は生えてなかった。
湧いてきたゴブリンと、その色について思考が持ってかれてたが、自分たちの色が抜けてることも理解していた。
赤鬼の背後。左右から、槍と双剣、赤と青のゴブリンが迫る。
「…………こいつらか?」
”角”は、赤と青の色が付いている。つまり、ゴブリンと纏っている色と同じだ。
色の付いたこいつらを倒すことで、その色の角が付けられる?
それなら、
「閏尾!青いゴブリンだ。」
__ナーォ。
そして、俺は、赤いゴブリンへ。投擲をする。
水球が、双剣を持った青いゴブリンへと飛んで行く。
衝撃音と、同時に閏尾に変化が起こる。
「”角”が青くなった。」
そして、視界を掠める”赤色”。
「ビンゴ!」
投擲による俺の飽和攻撃は、出来なくなったが、これでいい。
ゴブリンが全滅した。
先程の行動通りなら、あれが来る。
「赤鬼と青鬼の《共哭き》が、」
赤鬼が動きを止めている。
もう、ナイフは利かない。けど、赤鬼は金棒を振り回している。
その瞬間。
目の前に”赤鬼”。
「っなんで!」
十分な距離を開けていたと思った。巨体を考えて、十数メートル。
その距離を…………。たった一歩で、
距離を詰められていたのか。あの大量のナイフ浴びながら…………。
踏み込み、黒い金棒が、振り下ろされる。
身体に当たり、吹っ飛ばされる。
つるんっ。
だが、弾かれたのは、俺の方ではなく、赤鬼の攻撃だった。
思考が一瞬。真っ白になる。
何が起こったか。わからない。
けど、チャンスだ。
「っ閏尾!吹っ飛ばせ!」
__ナーォ。
巨大な水球が、赤鬼にぶち当たる。
距離と、衝撃が近かった。俺自身も飛ばされ、ダメージが入る。
だけど、これで距離ができた。
赤鬼から逃げながら、先ほどのことを考える。
どうゆうことだ?赤鬼の攻撃を俺が弾いた?
そんなスキルは持ってない。アイテムも持ってない。仮面だって動いた感じはしてない。
と言うか、この感覚は知っている。さっきから見ていた閏尾の水球が弾かれる感覚だ。
つまり、
「赤鬼の攻撃が効かない?」
いや、おかしい。
それなら何で、赤鬼は攻撃してきた?赤鬼は、知らなかった。気づかなかった。何に………?
「…………”角”か。」
直前まで俺は、”青い角”だった。
だけど、今は”赤い角”。
色違いだとダメージが入るのなら、同じ色なら攻撃が通らない。
思考が整理され、考えがまとまっていく。
もし、そうなら今の状態。赤い角でいて、攻撃を弾き続ければ楽に勝てるんじゃないか?
視線を赤鬼に、向ける。
赤鬼は動かない。
ドスンッ。と重い音を立てながら、黒い金棒を地面に置き。
赤い肌の両手で、頭を抱える。
__来る。
そう思った。瞬間。
ブチ……ブチブチ……ブチブチブチッ。
首がねじ切れ回る。首の骨が折れる音ではない。
“何か別のものが、骨の中に入り込んで押し広げている音” に近い。
赤鬼の首が、ゆっくりと、
まるで“誰かに外側から回されている”かのように、
180度、逆方向へねじれていく。
ちょうど、青い片面が正面に来た。
次の瞬間――
赤鬼の身体が裏返った。
全身が青く動く。
首から、腕から、身体から赤い肌を食い破る様に、ジャンパーを裏返す様にして体が青くなっていく。
異様な光景だった。
赤い皮膚が剥がれ落ち、その下内側から何かが這い出てきたように、肉が、骨が、身体が変わっていく。
見た目が衝撃的すぎて気づかなかった。
悲鳴が”哭き声”が、この場を支配する。赤い仮面も青い仮面も哭いていた。
扉が開かれていた。
色を纏ったゴブリンがその場から、
怯え震え苦しむように、生贄のように押し出されてくる。
赤から青へ。
青から赤へ。
色が、変わる。
「……そう簡単には、いかないか。」




