色喰い鬼
色の消失から、赤と青の”角”のギミックを解いたと思ったんだがな…………。
「第二形態って呼んでいいのか?」
赤鬼の身体が裏返り、青鬼へと反転した。
肉体を変えたと思ったら、また哭き声を上げ、ゴブリンを増やしてくる。
こいつら、ただでさえ変な顔色なのに、もっとひどい顔になってるよ。
今回の哭き声を発した後でも、俺たちの角は付いたままだし、ゴブリンも色を纏ってる。
赤鬼が哭いた時と条件は変わっていない。
変わっているのは――ボス本体だけ。
「青い片面を着けていたと思ったら、今度は自分で青鬼になったってか。」
まあ、ギミックは一緒みたいだし、やることは変わらない。
「切り替えていこう。」
今の俺たちの角は、
閏尾が、青い角。
俺が、赤い角。
つまり、さっき同じ、鬼にダメージを与えられるのは、俺だけ。
「閏尾。赤いゴブリンを狙ってくれ。俺は、青いゴブリンを倒してヘイトを稼ぐ。」
__ナーォ。
了解の返事を聞き、視線を戻す。青鬼の方へ。
青鬼は黒い金棒を片手で持ち、
無造作に振り下ろした。
潰れる音。
ポリゴン化する光。
地面に転がるのは――
青いゴブリン。
「__っなにを……?」
驚く暇もなく、異常が起こる。
潰した金棒から、青い“色”が吸い上げられるように逆流し、
青鬼の腕へと登っていく。
腕に到達したころには、どす黒い色をした青が、金棒とその片腕を染め上げる。
青い肌がさらに濃く、重く、禍々しくなる。
腕と武器が重なり、一本の巨大な“青い腕”のように見えた。
「味方を……殺した…………。」
続けざまに、起こる現象に目が回ってくる。
身体を変えたと思ったら、次は見方を殺す。
こいつの行動が、わからない。“理解しようとすること”自体が間違えてそうだ。
ただ、現象だけ見れば――
「色を、奪った……。」
先程まで俺たちがやっていた行動。
それをなぞったように、奴が色を纏っている。
「元々青いんだから、いらねえだろ。」
やるなら、赤奪えよ。
そう思った瞬間。
青を纏った金棒が__
飛んできた。
「っ……!」
咄嗟に、回避を行ったが、肩を掠める。
「ノーモーションで、武器を投げてきやがった。」
構えも予備動作もない。
ただ“投げたいと思った瞬間に投げた”みたいな動き。
どんなバカぢからだよ。せめて投げる構えを取れよ。
全く、なんつう動きしやがる。
青鬼が金棒を追うように、突進してくる。
「早すぎ!」
こいつ、さっきよりも早くなってる。
回避行動を取ろうとするが、間に合わない。
__仕方ねえ。
指に力を入れ、ナイフを投げる。
狙いは、腕。
最初の投擲。
腕に刺さったままのナイフに、目掛けて投擲をする。
吸い込まれるように腕に飛んで行くが__違和感。
「……あれ?ない。」
……そうか、身体が裏返ったんだ。なら、刺さったナイフは内側に____。
__衝撃。
身体が吹っ飛ばされるのと、同時に思考が再開される。
HPゲージが、ごっそりと減った。
まだ、回復アイテム持ってないんだぞ。
閏尾は大丈夫か?
頭に感触ある。
大丈夫そうだ。
そういや、角青いから、ダメージは入らないか。
第二形態から違って来るかもしれないから油断はできない。
地面に転がりながらも、思考は続けていく。
一応、ナイフで起動変えたからまともにはくらってないどうけど、ダメージが重いな。
軽い脳震盪みたいな感覚だ。
脳震盪なったことないけど。
地面から身体を離し体制を整えながら、思考が加速する。
回避スキル無いのはきついな。
今からでも、スキルを交換するか?
そんな、暇があるならとっくにやってるよな。
視野が、視界の、端が暗く沈む。
__次は、どうすればいい?
詰み。
という文字が、頭を支配する。
__ペシッ。
頭に、小さな。しかし、確かな意思を持った手が触れる。
「__っはぁぁぁぁぁ…………。ありがとう、閏尾。」
__落ち着け。そう言った気がした。
はは。まさか、AIに諭されるとはな。…………思ってた通り、俺より頭が良さそうだ。
落ち着いたところで、何か変わったわけではない。
回避スキルがない以上。奴との攻防は処理しきれない速度で展開されている。
素のステータスでは、間に合ってない。
けど、
「まだ、やれることは残ってる。」
チラっと。
”それ”を見る。
「準備してるのが、お前だけだと思うなよ。」
色を奪う鬼を捉えながら、指にかかるナイフを弄ぶ。




