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スキルコネクト 〜コミュ力 ゼロ、社会制 ゼロ、の社会不適合者にMMOの壁は高い〜  作者: 発条ザムライ
そらから、きたもの

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期待は重くのしかかり、裏切りは軽く突き放す。

「ふざけんなぁぁ!」


ガキンッ!ガキンッ!


振り下ろした棍棒が、ことごとく弾かれる。

手応えが、ない。


「硬すぎんだろ!こいつ!」


目の前にいるのは、(うし)

鈍重なはずの巨体は微動だにせず、ただそこに“在る”だけで圧を放っている。


皮膚――いや、外殻か。


棍棒が当たるたびに、鈍い金属音を響かせる。

生き物を殴っている感触じゃない。

壁を叩いているような感覚。


「フッ……!」


距離を詰め、もう一撃。


ガキャンッッ!!


嫌な音が、手元から伝わる。


__あ。……やべ。


一瞬遅れて、理解する。


今の音は、“当たった音”じゃない。

壊れた音だ。手に伝わる感触が軽い。


視線を落とす。


ヒビ。


そして――砕ける。


3()()()の棍棒が、あっさりと寿命を迎えた。


「……マジかよ。」


乾いた声が漏れる。


攻撃が通らない。武器がもたない。


それでも、丑は一歩も動かない。

ただそこに立っているだけで、こちらのリソースを削ってくる。


距離を取る。


このまま殴り続けても意味がない。

削られて終わるだけだ。


一瞬、視線が揺れる。


逃げるか?


いや――


「……一回、仕切り直すか。」


低く呟き、即座に判断を切り替える。

踵を返し、扉へと駆ける。


背後から、鈍い気配が迫る気がした。


振り返らない。


そのまま――


扉を、叩き閉めた。













棍棒が乾いた音を立てて床に転がる。

視線の先で、砕けたネズミの残骸が、光の粒子となってほどけていく。

空中に溶け、散り、やがて、何も残さず消えた。


戦闘の終わりを告げるように、空気が緩む。


その瞬間。


――ピロン。


軽い音とともに、ウィンドウが強制的に開いた。


「……ん?」


眉をひそめる。


これまでの戦闘にはなかった挙動だ。

視線を落とす。


すると。


選択肢が表示されていた。


|「(ねずみ)」の撃破おめでとうございます。

|次の2つから報酬をお選びください。

|・宝箱  ・次の階層に移動する。


うわまじか…………。


選ばせるタイプか。


「どっちもじゃダメ?」


ダメ元で呟く。返事はない。


「さいですか…………。」


肩を落とす。


だが、すぐに思考を切り替える。


さて。俺は、なんでここに来た?

ダンジョン攻略?マップの開拓?


――違う。


「顔隠せるアイテムだろ……!」


そうだ。

それが最優先だ。


まずは顔だ。身バレ防止だ。


「……宝箱、一択だな。」


迷いはない。選択する。


ウィンドウが、静かに消える。


すると。


さっきまで何もなかったはずの部屋の中央に、

ぽつん、と宝箱が置かれていた。


わずかな緊張。ほんの少しの期待。

手を伸ばし、蓋に触れる。


そして開ける。


「はぁぁぁぁぁ…………。」


魂が抜けるかのような、深いため息が漏れた。


中に入っていたのは、一本のナイフ。


残子(ざんし)のナイフ


武器ですか…………。


いや、まあ、うれしいよ。

正直、今の装備はひどかった。

初期武器に、ゴブリン産の棍棒。

まともな武器が増えるのはありがたい。


……だが。


「ナイフ一本で何ができんだよ…………。」


ぼやきながら、詳細ウィンドウを開く。


ん?あれ?


その瞬間。目が止まる。

もう一度、確認する。


「…………これ、特殊能力持ってるじゃん!」


さっきまでの落胆が、綺麗にひっくり返る。


「なんだよ最初から言えよ〜……。」


__もう、勘違いしちゃったじゃないですか~。


苦笑しながら、ナイフを軽く振る。

悪くない。

いや、むしろ――


「……当たり、か?」


小さく呟き、そのまま検証に入る。










数分後。




(ねずみ)の部屋を閉じる。


「はぁぁぁぁぁ…………。」


本日、2回目のデッカイため息。


さっきとは違う。期待して、裏切られた後のやつだ。


「こりゃダメだ…………。使いもんにならない。」


手の中のナイフを見つめてそう呟く。


運が無いのか何なのか。こんなものしか手に入らないリアルラックが忌々しい。

運が悪いわけでは無いと思ってるんだ。

特殊能力をもった武器なんて、たぶん珍しいと思うから。

だけど、…………。


軽く頭を振る。


はぁぁぁ………。切り替えていこう。




部屋を見渡しながら、思考を整理する。

今回の収穫は二つ。


一つ。


部屋のモンスターを倒すと、攻略か報酬を選ぶことになる。


攻略なら次の階層に行き、報酬なら宝箱が出現する。


そして、もう一つ。


「……つまり、チャンスはあと11回、ってことか。」


十二支。


1つ終わった。


残りは11。


そのすべてを“報酬”に回せば

仮面を引き当てるチャンスは、あと11回。


「それで出なきゃ……………。」


町に戻れない。顔を隠せない。

このまま進むしかなくなる。


「……いや。」


首を振る。否定する。


「出す。」


低く、言い切る。


「絶対に、出す。」


報酬の中に仮面がある保証なんてない。

それでも、


「引くまでやる。」


執念に近い何かが、胸の奥で燃える。




…ふと。

思考が引っかかる。


「……あれ?」


11回、全部外したら。

ダンジョンの攻略はどうなるんだ?

その場合。


「ダンジョン、進めなくね?」


報酬ばかり選べば、次の階層に行けない。

つまり。詰み。


「…………。」


数秒、沈黙。

そして。


「……まぁ、いいか。」


あっさりと切り捨てる。


どうせ出す。出せばいい。

出なかった時のことなんて、考えるだけ無駄だ。


「最悪、サングラスみたいなのでもいい……。」


基準がだいぶ下がっている。




気を取り直し、視線を動かす。

次の扉。


「……(うし)、か。」


扉に手をかけ、心の中で、一つだけ願う。


――次こそは。


「……顔を隠すアイテム、来いよ。」


小さく呟き。


(うし)の扉を、押し開けた。

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