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【BL】真砂先輩はリードしたい!  作者: かがみゆえ
第1章:交際スタートと真砂先輩の焦り

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第2話 距離感のバグ

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「……あのさ、水瀬くん」


「ん?」


 夜の男子寮、静の部屋。


 静はベッドを背もたれにして胡座をかいて、優牙を見ていた。


 優牙は静の隣で足を崩して座り、持ってきたおにぎりを黙々と食べている。


(……食べてるところも可愛い。いや、そうじゃなくて!)


 静はぶんぶんと首を横に振った。


 現在、二人は付き合いたてだ。


 優牙より一つ年上である静は、色々とリードしたかった。


 昨日の夜、静はスマホで【彼氏 リード 方法】や【年上彼氏 スキンシップ】などを検索し、バッチリ予習をしていた。


 作戦はこうだ。


『自然な流れで距離をつめ、相手がドキッとするような言動で主導権を握る』


 意を決した静は作戦を実行することにした。


「水瀬くん、口元に米粒ついてるよ」


 静は優牙に笑い掛けて、スッと手を伸ばす。


 これが少女漫画なら静に指で米粒を摘ままれた優牙が顔を赤らめる場面である。


 静が先輩らしい余裕を見せる絶好のチャンスだった。


 しかし、静の指が優牙の口元についた米粒に触れた瞬間。


「ん」


 優牙は静の手首を掴むと、そのまま静の指先を自分の口元に持っていき、ぱくりと米粒を食べた。


「っ!?」


「どうも」


 優牙は無表情のまま、何事もなかったようにおにぎりにかぶりつく。


(な、なんでそうなるの……!?)


 静の顔が熱くなる。


 優牙を赤面させようと手を伸ばしたはずなのに、優牙の唇に触れてしまった。


 一瞬だったので唇の感触が分からなかったが、静の方が赤面する羽目になった。


 優牙の行動には一切の計算やあざとさを感じない。


 ただ素直に“米粒を取ってもらった”くらいの感覚なんだろうが、それが余計にタチが悪い。


「……水瀬くんさ」


「なに?」


「君って……本当、なに考えてるか分からないよね」


 静が敗北感に打ちひしがれながら溜息をつくと、優牙はぴくっと眉を動かした。


「………俺、今すごく笑ってるけど」


「どこが!?」


 静は思わずツッコミを入れてしまった。


 まじまじと優牙を見るが、無表情の顔は能面のように動かない。


 優牙はおにぎりを食べ終わると、真顔で静を見つめ返した。


「俺、先輩の部屋でおにぎりを食べれて、すごくテンションが上がってます」


「全然そうは見えないんだけど……」


「言葉で伝えてます」


「!」


 淡々と語る優牙だが、静は優牙の耳が少し赤くなっていることに気が付いた。


「………」


 優牙は無表情で何を考えているか分からないが、こういう時に分かるちょっとした変化。


 静はそのことに気付いているのは自分だけだと思うとたまらなくなる。


「……ずるいよ、水瀬くんは」


「何が?」


「僕、先輩なんだからね」


「知ってます。1コ上です」


 静は右手で優牙の頬にそっと触れる。


「そういうことじゃなくて」


「?」


「……もっと君をドキドキさせたいし、リードしたい」


「………」


 静が真剣な眼差しで告げると、優牙は黙ってしまう。


「……じゃあ、してください」


 優牙が静の両肩に手を置く。


「へっ?」


 そのまま体重をかけられ、体勢を崩した静はフローリングの上に背中から倒れ込む形になってしまう。


「水瀬くん……!?」


 気がつけば、静が優牙に押し倒される形になっていた。


 上から見下ろしている優牙は別人に見えた。


「……真砂先輩」


「っ、な、なに……?」


「リード、待ってます」


 無表情のまま、静をまっすぐに見つめてくる優牙。


(予習だと僕が押し倒すはずだったのに……!)


 結局、静は今回も優牙のペースに呑まれてしまった。


 自分が“下”なんじゃないかと一瞬思ってしまうが、可愛い優牙を前に静はこれ以上格好をつけるのは諦めた。


 ただし、今日“は”である。


「……ん」


 静は観念して、優牙の背中にゆっくりと腕を回した。


 恋愛初心者同士の攻防戦は、まだまだ静の思い通りには進みそうにないのだった。


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