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【BL】真砂先輩はリードしたい!  作者: かがみゆえ
第1章:交際スタートと真砂先輩の焦り

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2/16

第1話 恋人同士になりました。

 .





 夜の寮は静かだった。


 消灯時間を過ぎた廊下には人影もなく、聞こえるのは空調音だけ。


 その静寂の中で、真砂静はベッドに寝転びながらスマホを眺めていた。


 スマホの画面をスクロールしても、気になるトピックスはない。


「!」


 もう弄るのを止めようかと上体を起こすと、ドアをノックする音が聞こえた。


「はーい」


 ドアを開けると、立っていたのは水瀬優牙だった。


 いつもの無表情で静を見ている。


「水瀬くん、どうしたの?」


「ちょっとだけ……」


「うん?」


「……話したい」


「いいよ、おいで」


 静がベッドに腰掛けて手招きすると、優牙は隣へ座った。


 二人の肩が軽く触れる。


 普段なら気にしない距離なのに、静はなぜか意識してしまった。


「水瀬くんがこの時間に来てくれるなんて珍しいね」


「そう?」


「それで話って?」


「……うん」


 短い返事。


 優牙はなにか言いたそうに視線を泳がせている。


「悩み事?」


「悩み事じゃない」


「じゃあなに?」


「俺、先輩といるの落ち着く」


「っ?」


 さらりと言われて、静は一瞬言葉を失った。


 優牙は天然だ。


 だから、こういうことを平気で言うが、言われた側はたまらない。


「……そりゃあ、どうも」


「うん」


 優牙は満足そうに頷いた。


「………」


「………」


 二人の間に沈黙が流れるが、気まずくはない。


 しばらくして、優牙が口を開く。


「先輩」


「ん?」


「最近、他のやつといること多い」


「そう?」


「そう」


 即答だった。


 少しだけ拗ねたような声。


 そのことに気付いて、静は思わず笑ってしまう。


「嫉妬?」


「………」


「図星じゃん」


「違う」


「顔に書いてあるよ」


「違う違う」


 否定しながらも、優牙の耳が少し赤い。


 静は堪えきれず吹き出した。


「かわいいなぁ~」


「かわいくない」


「いーや、かわいいよ」


「……真砂先輩の方がかわいい」


「は?」


 優牙は真顔で静を見ている。


 冗談ではないらしい。


「先輩は優しい」


「普通だよ」


「優しい」


「………」


「だから好き」


 好き。


 その二文字が静の頭の中で何度も反響する。


 優牙は真っ直ぐ静を見つめている。


 サッカーをしている時と同じ目。


 だからこそ、優牙が本気だと分かってしまう。


「それ、どういう意味の?」


 静は自分でも情けないくらい小さな声だと思った。


 付き合ってるのに、意味を尋ねるなんておかしな話だ。


「恋愛の方」


「っ!」


 即答され、静は思わず両手で顔を覆う。


「反則だよ……」


「?」


「そんな真顔で言わないで」


「だめ?」


「だめじゃないけど……」


 優牙は首を傾げる。


 本当に分かっていないらしく、静はため息をついた。


「……僕も」


「?」


「水瀬くんのこと、好きだよ」


「………」


 数秒の沈黙。


 優牙の目が少しだけ見開かれていた。


 感情表現が少ない優牙にしては珍しい反応だった。


「ほんと?」


「ほんと」


「……嬉しい」


 そう言って優牙は静の肩に頭を預ける。


 まるで安心した猫のようだった。


「近い近い」


「いや?」


「……いやじゃないけど」


「よかった」


 小さく笑う優牙。


 その笑顔を見た瞬間、静は優牙には勝てないなと思った。


 サッカーでも恋でも、きっとこの先ずっと。


 静がそっと優牙の手を握ると、握り返してくれた。


 静かな夜の中で、二人だけの秘密を確かめるように。


.

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