14話
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その日の夜。
静の部屋のドアがトントンと控えめに叩かれた。
「はーい」
「真砂先輩。水瀬です」
「!」
静がドアを開けると、そこには優牙が立っていた。
部屋着を着た優牙は、部活中のグラウンドでのオーラはどこへやら、少しぼんやりとしていた。
「……入ってもいいですか」
「うん、どうぞ」
優牙がベッドの前に腰を下ろすと、静はペットボトルのお茶を差し出す。
優牙は両手で受け取って、『ありがとうございます』と小さく呟いた。
ちびちびと何口か飲んでから、ふぅと息をつく。
「……今日」
「え?」
「真砂先輩、グラウンド見てましたよね」
「!」
静は思わずピクッと肩を震わせた。
木の影に隠れていたつもりだったのだが、しっかり見られていたらしい。
「あー、うん。水瀬くん、部活でちゃんとやっていけてるのかなって……ちょっと心配になっちゃって」
「心配?」
優牙は不思議そうに首をかしげた。
自分の無表情のせいで心配されていたとは微塵も思っていないようだ。
「……邪魔じゃなかったならいいんだけど、すぐ帰っちゃってごめんね」
「邪魔じゃないです。……見られてるの、分かりました」
優牙は両手でペットボトルを持ったまま、じっと静を見上げてきた。
相変わらず表情の変化は少ない。
だが、その瞳は真っ直ぐと静を映していた。
「カッコいいところ、見せられて良かったです」
「っ」
口数少ない優牙が照れもせずにさらりとそんなことを言う。
静は言葉に詰まり、胸がキュッと締め付けられた。
部活中に鋭い眼をしていた人物と、今目の前でいる人物が同じ人間だとは思えなかった。
優牙のギャップが静の心を容赦なく乱してくる。
心配で見に行ったはずなのに、逆にノックアウトされて帰って来てしまった。
(ダメだ……なんだか、この子にはペースを狂わされる)
静は落ち着かないのを隠すように苦笑し、目の前にいる優牙の頭にそっと手を伸ばした。
「うん。すごく、カッコよかったよ。……心配なんていらなかったね」
「!」
静は本心を伝えて、優牙の頭を撫でた。
嫌がると思ったが優牙は大人しく頭を撫でられていた。
優牙は無表情で口数が少ないだけで、性格や口が悪いわけではない。
(この子は大丈夫だな)
優牙の頭を撫でながら、静は安堵するのだった。
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