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過去編 A級パーティーの壊滅

温かな隠れ穴を後にし、パーティーは曲がりくねった険しい氷壁に沿って、地下迷宮の最下層へとさらに足を踏み入れていった。


その後の道のりは、ローウェンの判断を裏付けるものだった。中枢に近づくにつれ、魔物たちの反撃は狂気を帯び、一切の容赦をなくしていった。だが、十分な休息を取って万全の状態にある六人の小隊は、まるで精密に噛み合う歯車のような攻略兵器と化し、立ちはだかるすべての障害を粉砕していった。


半日に及ぶ進軍の末、高さ十数メートルに達する、表面に分厚い万年氷をまとった巨大な石扉が、ついに通路の突き当たりにその威容を現した。


「ふぅ……ようやく着いたな」


ローウェンは白い息を吐き出し、軽く肩を回した。彼は振り返り、仲間たちに自信に満ちた笑みを向けた。


二人の神官プリーストが即座に杖を高く掲げると、神聖な金色の光が温かな奔流となって降り注ぎ、全メンバーに最高位の『神聖なる防壁ホーリー・ウォール』と『力の祝福パワー・ブレッシング』を授けた。後衛の二人の魔術師メイジもすでに膨大な魔力を杖の先端に収束させ、臨戦態勢を整えている。重装戦士のコフトは静かにタワーシールドを構え、揺るぎない巨岩のように陣形の最前線を守っていた。


「みんな、準備はいいな?」


ローウェンは快活に笑い声を上げた。


「行くぞ! 一気に片を付ける!」


言い終えるや否や、ローウェンは向き直り、ボス部屋へと続く大扉に片手を当てた。腕の筋肉を隆起させ、力任せにゆっくりと押し開いていく。


――ゴゴゴゴォォォ……!


地面と擦れ合う重低音が響き渡る。だが、扉が開かれた直後、真っ先に吹き付けてきたのは、予想していた氷雪の覇者が放つような極寒の暴風ではなかった。


それは吐き気を催すほどの血生臭い悪臭と、この場所に存在するはずのない異様な『高熱』だった。


ローウェンの顔に浮かんでいた笑みが、瞬時に凍りついた。


巨大なボス部屋の中に、氷雪系の魔物は一匹たりとも存在しなかった。万年氷に覆われていたはずの岩壁は、高熱によって激しく溶解し、煮えたぎる熱湯となって滝のように流れ落ちている。そして大広間の中央には、強引に刻み込まれた直径百メートルを超える巨大な転移魔法陣が、眩い赤い光と禍々しい瘴気を放っていた。


その魔法陣の真上、宙には、黒マントを羽織った背の曲がった怪物が浮かんでいた。ゆっくりと振り返ったその頭部には二本の漆黒の角が生えており、全身から息もつけないほどの邪悪な威圧感を放っている。


「ほう? 魔法陣に惹かれてやってきた無知な獣かと思えば、人間の虫けらどもか」


魔王軍四天王の一人、『参謀』メダラスは、入り口で呆然と立ち尽くす小隊を冷酷に見下ろした。


「じつに哀れだな。お前たち、まさか本気で自分たちが迷宮の主を討伐しに来た英雄だとでも思い込んでいたのか?」


メダラスは蒼白な指を広げ、口元に極めて残酷な嘲りの笑みを浮かべた。その様は、無知な奴隷に死という恩赦を下す、高慢な絶対者のようだった。


「這いつくばり、この上ない栄誉に震えるがいい。貴様らのその卑しい血肉が我が魔族の大業のかてとなることこそ、その生涯における最大の誉れなのだから」


メダラスが優雅に手を振るうと同時に、巨大な赤い転移魔法陣から天を突くほどの血色の光柱が爆発的に立ち昇った。


「グオォォォォォ――ッ!!」


深淵の気配をまとい、血に飢えた魔物の群れが、決壊した濁流のごとく魔法陣から狂ったように湧き出し、血塗られた大口を開けて入り口の小隊へと襲いかかってきた!


「総員、迎撃陣形!!」


事態はあまりにも唐突で、敵の規模も想像を絶するものだった。だが、七年にわたり生死を共にして培われた阿吽の呼吸により、小隊に微塵の動揺もなかった。ローウェンは怒号を上げ、即座に長剣を掲げて一歩も退かずに最前線に立った。


「ローウェン! 右の防衛線は俺に任せろ、お前は前を斬り開くことだけ考えろ!」


重装戦士のコフトが叫び、その重厚なタワーシールドを地面に激しく叩きつけた。彼は決して揺るがぬ山岳のごとく、殺到する魔物の側翼を岩壁のように食い止める。


「『炎息のフレイム・ブレス』、発動!」


リンデリルとレドリットが声を合わせて詠唱すると、灼熱の火網が瞬時に最前列の魔物たちを焼き尽くした。レドリットが大声で警告する。「隊長、治癒の範囲から出ないでくださいよ!」


「ハハッ! この程度の数、どうってことないさ!」


ローウェンは一撃で魔物の首を刎ね飛ばした。滾る熱い血が彼の若々しい頬に飛び散るが、その顔には依然として凄絶な、だが揺るぎない自信が満ち溢れていた。


「みんな、持ち堪えろ! 正面突破して、あの御託を並べてる野郎を斬り伏せれば終わりだ!」


彼らは極めて強靭な粘り強さを見せつけた。前衛と重装戦士は鬼神のごとく敵陣を切り裂き、後衛の魔法と治癒の光が絶え間なく飛び交う。天災のような第一波の猛攻に対し、このAランクパーティーは力技で防衛線を死守しただけでなく、魔物の屍を踏み越え、ゆっくりと前進し始めていた。


ローウェンは隙を逃さなかった。密集しすぎて生じた魔物の大軍の陣形の綻びを見抜き、決定的な突撃を仕掛けようと踏み込んだ。


だが、空中でそれを見下ろすメダラスは、哀れみと残酷さに満ちた深い嘲笑を浮かべていた。


「正面突破だと? 人間の戦術はじつに愚かだ」


メダラスは軽く首を横に振った。

「前方の盾がすべてを防いでくれると盲信する……『信頼』などというくだらない代物は、反吐が出るほど滑稽だな」


メダラスがそう言い捨てた直後。小隊の陣形の真後ろ――二人の神官が位置するはずの安全地帯の空間が、突如として不気味に歪んだ。


「え……」


最後尾にいたキャサリンがいち早く魔力の異常に気がついた。


しかし、遅すぎた。


上半身を剥き出しにし、禍々しい刺青を全身に刻んだブロドが、他の二人の直属幹部と共に、防衛が最も手薄な『真後ろ』に一切の前触れもなく出現したのだ。


「脆すぎる」


ブロドは一切の無駄な動作をせず、右腕をまるで鋭利な槍のごとく、真っ直ぐに突き出した。


――ズブッ。


身の毛のよだつような、血肉を貫く音が響いた。その瞬間、戦場全体の喧騒が凍りつき、時間が無限に引き伸ばされたかのように感じられた。


つい先ほど、焚き火のそばでローウェンの頬を包み込み、優しく凍傷を治癒してくれたあの手が、今はだらりと力なく垂れ下がっていた。ブロドの刺青に覆われた丸太のような腕が、背後から一切の容赦なくリサの胸を貫通していた。


常に優しい微笑みを浮かべていた金髪の神官は、悲鳴を上げる間すら与えられなかった。いつもローウェンを見つめていた淡いブルーの瞳は一瞬にして焦点を失い、口から微弱な吐息だけが漏れ出た。


「かはっ……隊……長……」


ほぼ同時に、もう一人の幹部が漆黒の利爪を振り抜き、隣で反応すらできなかったキャサリンの喉を瞬時に引き裂いた。温かな鮮血が噴水のように後方陣地を染め上げ、地面を毒々しい猩紅へと変えていく。


「――ッ!?」


背後から聞こえた異音に、ローウェンは猛然と振り返った。


視界に飛び込んできたのは、冷笑を浮かべながら腕を引き抜くブロドと、糸の切れた操り人形のように血の海に倒れ伏す、リサとキャサリンの無残な姿だった。


周囲の魔物の咆哮や、魔法の爆発音が、まるでこの瞬間完全に消え去ったかのように思えた。ローウェンの脳は真っ白に染まり、思考が完全に停止する。


「下がれ! 魔術師を護れ!!」


コフトが喉が裂けんばかりの怒号を上げた。小隊は神官の死によって瞬時に崩壊することはなく、幾多の死線を越えてきた彼らは本能だけで即座に対応した。


コフトは右翼の防衛を放棄し、タワーシールドを掲げて狂ったように反転し、二人の魔術師の前に立ちはだかろうとする。リンデリルとレドリットも即座に目を真っ赤に血走らせながら攻撃を放棄し、声を合わせて詠唱した。「『風炎障壁ウィンド・フレイム・ウォール』!」


展開された強固な魔法の壁が、辛うじて幹部たちの第二波の攻撃を押し留めた。ローウェンも狂ったように長剣を振り回し、命を度外視して後方へと救援に駆け戻る。


だが、それはもはや緩やかな死への抗いでしかなかった。


神官の治癒と体力増強バフを失い、前方から怒涛のごとく押し寄せる魔物の大軍、そして後方に控える圧倒的な実力を持つ三人の直属幹部を前に、魔術師たちの魔力は驚異的な速度で底を突きかけていた。


わずか数分の死守の後、『風炎障壁』は脆いガラスのように砕け散った。二人の幹部が獰猛な笑みを浮かべて飛びかかり、魔力の枯渇した魔術師たちへと容赦なく利爪を振り下ろす。


陣形は、完全に崩壊した。


「ローウェン……気をつけろ!!」


三人の幹部が一斉に矛先を転じてローウェンへと迫るのを目の当たりにし、満身創痍のコフトが最後の怒号を上げた。敏捷かつ致命的な一撃を前にして、重厚なタワーシールドは到底防ぎきれない。彼は毅然としてその巨盾を投げ捨てると、両腕を大きく広げ、無数の傷に覆われた巨体で、強引にローウェンの前に立ちふさがった。


ズブッ! ズチャァァァッ!


破滅的な魔力をまとった三本の腕が、同時にコフトの重装甲を貫通し、その内臓を無残に引き裂いた。


彼は肉塊の混じった鮮血を大口から吐き出しながらも、一人の幹部の腕を死に物狂いで掴み取った。そしてゆっくりと首を巡らせて、焦点がぼやけ始めた眼差しで、背後にいる兄弟分を最後にもう一度だけ見つめた。


「ローウェン……俺たちのことは気にするな……逃げろォォ――ッ!!」


残された最後の一滴の力を使い果たし、十六の時からローウェンと生死を共にし、酒場へ戻ったら浴びるほど飲もうと約束し合っていた男は、血の海の中へ重く倒れ伏した。


「兄貴ィィィィィ――ッ!!」


ローウェンの理性は、この瞬間完全に吹き飛んだ。


「このクソ虫どもがあぁぁぁぁぁ――ッ!!」


彼は獣のような凄絶な悲鳴を上げ、命を燃やす極限の力を爆発させた。長剣は肉眼では捉えきれぬ一筋の雷霆と化し、コフトに腕を掴まれていた幹部の頭部を、一刀両断に斬り飛ばした!


魔族の煮えたぎる鮮血がローウェンの全身に浴びせられる。血走った目をした彼は、まるで理性を失った悪鬼のごとく仲間の血だまりを踏みしめ、振り返りざまにブロドめがけて狂ったように斬りかかった。


だが、太刀筋すら見えぬ狂乱の一撃に対し、ブロドは避ける素振りすら見せなかった。


彼の右手中指にはめられた黄色の指輪が、目障りな光を放つ。


――ガキンッ!


ブロドは闘気をまとったローウェンの長剣を、素手で完全に掴み止めていた。完全に崩壊した若き剣士を眼前にして、その口元には少しも隠す気のない嘲笑が浮かんでいる。


「理性を失った獣など、恐るるに足らんな」


ブロドは左手で拳を握り、背筋も凍るような怪力を伴って、ローウェンの腹部へと重く叩き込んだ。


「グハァッ――!」


五臓六腑が瞬時に粉砕されたかのような衝撃。ローウェンは大量の血を吐き出し、まるでボロ布のように後方へと吹き飛ばされ、冷たい石の床に激しく叩きつけられた。


視界がぼやけ始め、周囲の魔物の咆哮が徐々に遠ざかっていくように感じられる。手からすっぽ抜けた長剣が、床に落ちて甲高い悲鳴を上げた。


ローウェンは力なく地面に這いつくばり、生温かい鮮血が彼の下から止めどなく広がっていく。彼はただなすすべもなく見つめることしかできなかった。血の海に倒れ伏す、つい数時間前まで焚き火のそばで共に笑い合っていた仲間たちの姿を……。


『前は俺が完全に抑える』というあの自信に満ちた言葉が、今は世界で最もおぞましい呪いと化し、彼の耳元で無情にもこだまし続けていた。

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