31.伝えそびれたこと
引き続き真央視点。
今回は短めです。
「ふぅ…危なかった」
庭から家まで全速力で走ってきた為、もうへとへとだ。
私はゆっくりと息を吐いて、乱れていた呼吸を整える。
そして、人心地ついたので一応後ろをしのがついてきていないか確かめた。
「…よし。いないね」
まぁ、何となくついてきてないだろうとは思ってたけど。
私はふぅと一息ついて、家の中に戻ると…なぜか廊下を行ったり来たりしているお父さんが目に入った。
私が声をかけるより先に、お父さんも私に気づいたようで、話しかけてきた。
「真央!」
「お父さん…廊下をうろうろしてどうしたの?」
「え?あ、あぁ…いや、これは…その。何でもな…いや。ここは正直に言った方がいいのか…?」
ぶつぶつごにょごにょと何かを言っているが、あんまりよく聞こえない。
「お父さん、なんて言ったの?」
「あー…えっと、真央が走って庭のほうに行ったから心配になって…でも私が水をさすのも違うかと思ってね」
「それで、廊下をうろうろしてたってこと?」
「まぁ、そうなるね」
「ふぅん?」
何だかお父さんの歯切れが悪い。珍しい。
でもなんだかそこを追求するのも違うような気がしたので、特に深く聞くことはせず、私は話題を移した。
「お父さんが教えてくれたおかげで、しのと庭で会えたんだけど…ついいつも通り接しちゃいそうになったから取り敢えず逃げてきたの」
「そうか。うん?そ、そうか。まだ真央が私の書斎から走っていった時間から十分もたっていないけれど大丈夫かい?」
「え?大丈夫って何が?」
「いや、忍君視点では真央は自分に話しかけにきたのに、すぐに走って立ち去った訳で…そうなると忍君からしたら真央は何がしたかったのかよくわからない人になっていないかなと思ってね」
「…あ」
(た、確かに…!しのからしたら、私とっても変な人じゃない!?)
真央はとても今更な事実に気がついた。
(あの時はとにかくボロを出さないようにしようと思って必死で…そこまで考えてなかった)
「まぁ、大丈夫だろうとは思うけれど…次忍君に会った時に行動を不審に思われていたらきちんと説明するんだよ、真央」
「うん。そうする」
「あぁ。あと、さっき伝えそびれたことがあるんだけれど、良いかな?」
「良いけど…伝えそびれたことって?」
「忍君の誕生日について何だけどね」
「しのの誕生日!?」
私はしのの誕生日という思っても見なかったワードが出てきたことに驚き、思わずお父さんを質問攻めにする。
「い、一体いつなの!?明日!?いやそれとも、もうすぎてることに今気づいたとか!?え!?どうしよう私何にも準備してないよ!?」
「真央…逸る気持ちは分かるけれど、一旦落ち着きなさい」
あわあわしている私とは対照的に、お父さんは落ち着いた様子だ。
取り敢えず落ち着けって言われたし、落ち着かないと…そう、落ち着いて…。
「いや、落ち着けるわけないよ!!」
私は思わず叫んだ。
何といったってしのの誕生日なのだ。いくら日々塩対応をされていたとしても、しのは私にとってすっごく大切な人だ。
だから、しのの誕生日は盛大にお祝いしたい。と言うかさせて欲しい!
プレゼントとかケーキとか。そうだ、サプライズでお祝いしたらどうだろう?
しの、喜んでくれるかな?
その時のしのの顔を想像するだけで、楽しくて思わず笑みが溢れる。
大切な人の誕生日。考えるだけでもすっごいわくわくする…!!
「…お、…真央?」
そこまで考えて、ふとお父さんの声が聞こえた。
「うぇ!?っと、何?」
驚いて思わず変な声が出てしまった。まだお父さんの話は続いていたらしい。
「忍君の誕生日は一週間後の4月14日だ。一週間あれば、十分準備もできるだろう?」
「うん!ありがとう、お父さん!…でも何でわざわざ教えてくれたの?」
普段は私としのの間にはあまり介入しないようにしているのに。
「あぁ、真央は誕生日とかちゃんと祝いたいタイプだろう?忍君もあの様子だと真央に誕生日を教えたりしてはいなさそうだったしね。それにこれは私の勝手な意見だが、一年に一日だけの記念日である誕生日を祝ってもらえないと言うのは可哀想だからね」
「そっか」
私としののために教えてくれたんだ。
そう思うと、胸の奥がポカポカとあったかくなったような気がした。
「よぉし!絶対しのがとっても喜んでくれるような誕生日にするぞぉ〜!!」
お〜!と天に拳を突き上げた私をみて、お父さんは
「…真央、ほどほどにね」
と、苦笑いするのだった。
今回から「R15」と「残酷な描写あり」のキーワードを追加しました。
追加はしましたが、あくまでお守り程度のものですので、これまでと変わらず更新していく予定です。
今後とも暖かく見守っていただけましたら幸いです。




