表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/142

意外だった特技

「……急いで損した…」


私達が朝食を食べ終わると同時くらいに

髪の毛がボサボサの状態でミザリーさんが帰ってきた。


「何よ、もしかして今日は休日とかそんなんだったの?」

「まぁ…と言うか、何です? この良い匂いは。

 誰か料理でも作ったのですか? と言うか

 あなた達の中に料理出来そうな人って居るんです?」

「エルちゃんだよ」

「えぇ!? 相当な実力がある魔法使いなのに家事が出来るのですか!?」

「で、出来たら不自然なんです!?」


私が料理をしたと言う言葉に反応したミザリーさんは声を荒げて居た。

流石に私もこれ位は出来て当然だと思っていたわけだし

そんな驚かれたことに驚いた。


「実力ある魔法使いと言えば魔法の研究しかしてないと相場が決ってます。

 基本的に実力ある魔法使いは変人が多いですし、魔法しか興味無いとか。

 いや確かに、エルさんは高レベルの魔法使いという割に

 随分とお淑やかと言うか礼儀正しいというか、謙遜してるというか

 他の高レベル魔法使いと比べて、極めてやりやすい性格ではありましたけど」

「ほ、他の魔法使い…そんなに性格悪いの?」

「実力ある魔法使いは大体…結構他人を貶したりしますからね」


……その言葉を聞いて、最初に頭に浮かんだのはテイルドールお姉様だった。

確かにテイルドールお姉様は結構周りを貶してたりするからなぁ。

ブレイズお姉様には従ってたけど、結構嫌そうな表情だったしね。


でも、ブレイズお姉様は魔法の能力も高いけど

全然周りを貶したりしたりはしないんだよね。

やっぱり結局は性格って事なのかな。


「まぁ、魔法という技術は人間にはかなり高度な技術ですからね。

 その技術を徹底的に極めている人物であれば高圧的になるのも頷けます」

「でー、そう言う奴らってエルちゃんに敵うわけ?」

「あー、それを聞かれるとハッキリとは答えられませんけど

 多分、エルさんの方が上なんじゃ無いですかね?

 ブレイカーを1人で倒せる程の実力者って魔法使いの中ではレアですし」

「なんで? 魔法ならいけそうだけど」

「いや、近付かれたら終りですし、魔法陣の展開に時間が掛りますからね」

「掛るの? エルちゃんすぐ使ってるよ? 魔法陣だって一瞬で出してるよ?

 凄く細かいの。マジックアローを使うときの魔法陣とかさ

 まるで芸術作品みたいに細かかったし、綺麗だったよ。


 まぁ、詳しく見たら矢がいくつも組み重なった感じの絵だったけどね。

 それと、近付かれてもテレポート使えば良いんじゃ無いの?」


魔法陣は細かく組めば組むほどに魔法の効果が上がるからね。

その分、集中力が要るけどね。


「いや、普通はそんなすぐに魔法陣は組めませんって。

 それに細かい魔法陣だなんて正直意味ないと思うんですけど?

 魔法陣なんて適当に組めばそれで良いと思うんですが、そんな感じなんです?

 あ、それとテレポートも高等魔法ですし普通はそんなにポンポン出せませんよ」

「エルちゃんが普通に使ってるけど、やっぱり凄い魔法なんだね」


私からしてみれば重要な魔法だからね、このテレポート。

テイルドールお姉様に教わった魔法の1つだし。


「しかし、非常に不思議な部分がどうしてもあるんですよね」

「と言うと?」

「いえ、先ほど言ったとおり、テレポートは高等魔法です。

 魔力の消費が激しく、そんなに何度も扱える魔法ではありません。


 物の転移程度ならまだしも、自分自身を転移させるのは

 あまりにも魔力消費が多すぎる。それをエリエルさんは

 さも当たり前の様に、何度も何度も扱っていたと聞いています。


 魔法学校から聞いた話ではエリエルさんの魔力量は

 リズさんの様に秀でていたという風には聞いていません。

 中の上。それ位と聞いているのです。


 だとすれば、何故そんなにも魔力消費が多い魔法を連発できるのか」

「魔法陣を事細かに展開すれば、それだけ魔力量の消耗が減るんですよ。

 誰もやってないのが不思議ですけど、私、あまり魔力量が無いから

 何とかどうすれば良いか頑張って調べてたら分かったんです」

「そんな話し…私は誰からも聞いていません」


それはそうだろうね。だって、私が見つけ出した事実なんだから。

人間達所かこの事実を知ってるのは魔王の娘達位だと思う。

魔法に精通してる魔の探求者ですらこの事実にはたどり着いていない。


何故なら彼らには私と違い、膨大な魔力量があるから。

わざわざ細かい所に焦点は当てない。彼らは新しい魔法にしか興味は無いからね。


だから、既存の魔法を強化しようとはしないし、魔力の消耗を減らそうともしない。

魔法に精通している人物は総じて魔力が膨大な場合が多いからね。


そう考えると、私はかなり特殊な部類だというのは間違いないよ。

魔力量が少ない魔法に精通している魔物なんてね。


「まぁ、正確には魔法陣で綺麗な絵を描きたいなーって思ってて

 それで色々とやってたら分かったことなんですけどね!」


と、ちょっとだけ馬鹿みたいな事を言って詮索を避けようとしてみる。


「いや、それで魔法の常識を壊さないで欲しいんですが…

 しかし、それは本当なのですか?」

「嘘は言いませんよ、魔力量が少ない私が魔力消費が激しい魔法を

 あれだけの頻度で使ってるのが何よりの証拠です」


言うべきか少しだけ悩んだけど、どっちにせよ詮索は免れそうにないしなぁ。

それなら早めに言うべきだよね、やっぱり。


「ふーむ、可能性には上がってましたが…しかしながら精密な魔法陣の展開は

 あまりにも時間が掛りすぎるため、検証困難であり実用性は皆無…

 例えこの可能性が正しかったとしても実戦で使用するのは不可能に等しい。

 そして、リズさんやエリエルさんの活躍を見ていたという人から聞いた話

 魔法の発動速度がかなり早かったとのこと。なら、余計に精密な魔法陣なんて」

「まぁ、頑張れば出来ますよ」


正確には数十年くらい頑張って練習すれば余裕だしね。


「うーん、あまりにも突出していてなんとも言えませんね。

 私達が知り得ている技術以上の魔法技術…それを独学で?

 確かに学校での成績は全て満点。知識面ではまさしく天才でしたが

 魔力量は中の上ほどで突出はしてない…

 天は人に二物を与えずとは言いますが、そう言う事なんですかね」


私は既に二物を貰ってる。これは2度目の命だからね。

既に1つの命を貰っておきながら、私は新たに命を1つ貰えた。

それは奇跡的でとても感謝すべき事。1度しか無い筈の命を2度も貰えた。

こんな奇跡、感謝しないわけにはいかない。


でも、私は2度目も自分の為に生きると思う。私はそう言う奴だ。

自己中心的で結局何をするにも自分第一だった気がする。

レイラードに恥じない姉になるってのも、やっぱり自分の為でしか無いから。


「ま、あなたの実力が突出していることは明白です。

 これ以上、成長するかというのも疑問符ですが成長しなくても

 十二分すぎるほどの実力者…実力は既にSランク以上は明白でしょうね」

「流石エルちゃん! あたしは誇らしいよ!」

「しかしまぁ、やっぱりエリエルさんの実力は分かりますが

 リズさんの実力は未だに不明瞭ですね。期待というか不安が大きいです」

「どうして!?」

「いやまぁ、エリエルさんの強化魔法ありとは言え

 ほぼ同じ条件である筈のリスデットさんと互角に戦えてましたし

 少なくともSランク冒険者に匹敵する実力はありそうですね」

「エッヘン!」

「まぁ、エリエルさんの強化魔法が強すぎただけでしょうけどね」

「えぇー!? 確かにエルちゃん凄いけどあたしだって凄いもん!」

「全くその通りよね」


ミザリーさんに聞えないくらいの小声でリトさんが少し微笑みながら呟いた。

彼女は確実にリズちゃんの確かな才能を感じているのが分かった。

Sランク冒険者であるリトさんがそう感じるほどだし、リズちゃんの才能は間違いない。


それは私でも分かるくらいだった。リズちゃんの才能は突出している。

あくまで人間の範囲だけど、その範囲内であればかなりの上位だと予想するよ。

それもこの齢で…成長すれば、勇者様に匹敵するくらいになるかもしれない。


「ま、先の話はまた後よ、後。エルちゃん、ミザリーに朝食出してあげてよ」

「はい、分かりました。私達が食べた朝食と同じで良いですよね。

 あ、何か嫌いな食べ物ってあります?」

「私の場合は油が濃い物以外であれば問題ありませんよ」

「ははーん、油だめなの? 私は平気よ? むしろ油濃い方が好きね」

「太りますよ?」

「運動するから平気よ」

「まぁ確かに、酒ばかり呑んでカロリー高い物ばかり食べてるのに

 実際かなりスタイル良いですしね。まぁ、腹筋はシックスパックですが」

「一応、腕の方も結構しっかりと筋肉付いてると思うけどそこは無いの?」

「全体的に筋肉質ですからね。そんな体格では同性も異性も近寄り難いでしょうね」

「冒険者なんて基本的にゃ天涯孤独よ。友人は…まぁ、出来れば作らない方が良いし」


友人といった直後に少しだけ言葉に詰ったのが分かった。

でも、ここも深く詮索しないことにした…思い出したくないことなのかも知れないし。


「まぁまぁ、ゴリマッチョでも良いのよ、うん。体格とかもあまり関係ないわ。

 好きな事やって、美味い物食べてやってりゃ問題無いのよ。

 と言う訳で、あんたもエルちゃんのご飯をさっさと食べなさいな。

 私が食べてきた食事の中で相当上位に来るわよ」

「はぁ、では期待させていただきます。よろしくお願いしますね、エルさん」

「はい、任せて下さい!」


よーし、本日2度目の朝ご飯。頑張って作ろっと!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ