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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
第1章、新しい再スタート
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協力戦の基本

クリムゾンタイガーの探索を私達は開始した。

確か、校長先生に渡された依頼書にはここら辺に居るそうだけど。


「うーん、何処に居るのかな?」


リズちゃんは周囲を見渡してる間に、私は足下を見ることにした。

クリムゾンタイガーは身体が大きいし、体重もある。

ここら辺に居るとすれば、足跡が何処かにあると思うけど…


「何処にも見えないよー!」

「そうだね」


あ、足跡があった。この方向は…うーん、森だね。

やっぱり魔物が多いから開拓出来てない場所が多いからね。

だけど、森の中で戦うってなると中々しんどそうだなぁ。

まず見付けるのに苦労しそうだけど…でも、足跡を辿れば大丈夫かな。


「じゃあ、こっちに行ってみようか」

「森の中だよ? 危なくない?」

「危ないけど、きっとクリムゾンタイガーはこっちにいるよ」

「うーん…そうかもね、ちょっと不安だけど行こうかな」

「そうだね、それじゃあ…あれ?」


森の方に足を運ぼうとしたとき、何だか森の奥が光ったような…


「よーし、行こう!」


その光りはリズちゃんは気付かなかったみたいで、そのまま早足で森へ向った。

同時にその謎の光りが強まった。


「エルちゃん、どうしたの?」

「リズちゃん! 前!」

「え?」


急いでリズちゃんに警告をしたは良いけど

森の奥から飛んで来ている炎の塊は既に避けられない距離にあった。


「え…」


そんな場面に直面したリズちゃんの動きは完全に固まってる。

動こうとする素振りすらなく、そのまま立ったまま。

このままだとリズちゃんが危ない!


「動いて!」


急いでリズちゃんに手を伸ばして、リズちゃんの手を引き、後ろに投げ飛ばした。

だけど、そのせいで私はあまり動ける状態じゃなくなった。


「エルちゃん!」

「私はここじゃ死なない!」


すぐに右手を前に出してその火球に手を触れた。

普通なら大ダメージは確定するような場面だけど私にはドレインフィールドがある。

手さえ触れる事が出来れば、即時に発動することが出来る!


「…やっぱり、魔法…これはきっとクリムゾンタイガー」

「え、エルちゃん…? だ、大丈夫? さっき…絶対に」

「うん、大丈夫だよ。私は平気」

「なんで…あれは魔法…それも、凄い火力の」

「うん、大丈夫。怪我も何も無いよ」


まだドレインフィールドを学校で披露したことはない。

こんな魔法、明らかに不自然な魔法だからね。

このドレインフィールドはテイルドールお姉様と戦ったときにしか使ってないし。


「とにかく、今はクリムゾンタイガーをあぶり出さないと。

 何処から攻撃が出て来たかは分かってる」


自分の前に小さめの魔法陣を展開した。


「マジックアロー!」


特に属性も無い、魔法を使う場合に基本となる技。

大した破壊力は無いけど、この魔法にはある程度の法則がある事が分かってる。

放出する時の魔力が巨大であれば巨大な魔法の矢を放てる。

そして、魔法陣が緻密で精密であればある程、鋭利で高い貫通力を誇る様になる。


これはどうやら、基本魔法全てに適応される法則だった。

マジックソードでも同じく、多大な魔力であればあるほど巨大な刃を生み出せる。

そして、魔法陣が緻密で精密なら高い切れ味を誇る刃を生み出し、斬り付ける。

マジックランスも同じ、魔力が大きければ巨大に

魔法陣が緻密であれば高い貫通力を誇る。


レイラードに誇れる姉になろうと努力したときに発見した法則。

テイルドールお姉様が扱う基礎魔法と自分が扱う基礎魔法を比べたときに分かった。


「マジックアローって、そんなに威力が無いはずなのに」


私が放ったマジックアローは森に生えていた木々を容易に貫いていた。

基礎魔法だし、普通は大した威力を誇らないけど

緻密に組めば組むほどに威力は上がる。単純だからこそ威力は簡単に上げられる。


「エルちゃんのマジックアロー、小さいのに凄い威力…どうして?

 マジックアローって魔力を込めれば込めるほど

 巨大化して威力が上がるはずなのに」

「単純な物ほど色々な応用が利くんだよ、リズちゃん」


人類がまだそこまで到達していない技術だからね。

私にはエビルニアとして生きてた間の、長い長い時間があった。

長く魔法の研究ばかりしてたから見付けた技術って感じだよね。


テイルドールお姉様も私がこれを見付けて話した後は

同じ様に魔法陣を緻密に組んで魔法を使ったりしてたけど

お姉様は魔力量で力押した方が強力だから細かい事はしないんだよね。


逆に私はそう言った手段で魔力量の減少と破壊力の上昇を望まないと駄目だから

そこは極めてる。私の少ない魔力量でも高い火力を出すにはこれしかないから。


「リズちゃん、無駄話はここまでだよ…来たから」


私とリズちゃんが会話をしている間にクリムゾンタイガーが森の中から姿を見せた。

どうやら、私のマジックアローはちゃんと当ってたみたいだね、血が出てる。

だけど、致命傷ではなかったみたい。流石に一撃では倒されてくれないか。


「本当だ、よーし!」

「リズちゃん、私はあまり接近戦は得意じゃないから」

「うん! 至近距離の戦いならあたしの出番だね!」

「うん。だけど、突っ込みすぎないでね? 注意を惹きつけることを優先して。

 攻撃は私が担当するから、前衛は任せるよ」

「分かった! でも、エルちゃん躊躇いなく指示出してくれるね?

 そんなに戦ってたの? あたしと同じで実戦経験あまりないと思うけど」

「うん、少しね…でも、不安だったら」

「不安なんて全然無いよ! ただ凄いなって思っただけ!

 じゃあ、行くよ! あたしは突っ込むことしか能が無いからお願いね!」

「任せて、私もリズちゃんを守るから」


前衛と後衛の連携はパーティー戦では絶対に必須の項目。

基本的にこう言った指示を出すのは後衛の役目だからね。

前衛は敵の行動を読まないといけないから仲間全体にまで目を向けるのは難しい。

だから、後方から見ている私みたいな後衛が指示を出すのがパーティーの基本。


そして同時に、どういう風に戦術を組み立てるかも大事になる。

私が扱える魔法はこの姿になってから減っているけど

マジックアローなどの基礎魔法は覚えてる。


他にはファイヤー、アイスとかの下位の基本属性魔法。

特殊なのはドレインフィールド、ワールド・エンド、

オーバーヒート、強化魔法、回復魔法、テレポート。

相手の行動を制限する魔法とかはまだ扱えないからこれらで戦わないと駄目だ。

一応、アシッドスネークやポイズンスネークは使えるけど

あの機敏な動きが出来る相手には効果が薄いからね。


昔ならもっと多彩な魔法が扱えたけど、今はこれだけって言うのは仕方ない。

ここからもう一度この姿で使える魔法を開発していかないと。

人の姿だとあの時の姿と同じ様な感覚では魔法を使えないみたいだから

中級魔法以上の魔法を発動させるのが少ししんどいからね。

魔力消費も前以上に高くなってるから先が長すぎる。


いや、今はそれどころじゃないかな。今はリズちゃんの援護優先だよ!


「リズちゃん、強化魔法を掛けるよ!」

「うん!」

「スピードブースト」


掛けた対象の行動速度を上げる事が出来る魔法

と言うよりかは、脚力の上昇が出来る強化魔法。

あまり強化しすぎるとバフを掛けた仲間が負傷するから加減はしっかりと。


「おぉ! 足が軽くなった!」

「これで移動速度が上がるはずだよ。正確には脚力が上がってる感じだけど」

「分かった!」


リズちゃんは私のバフを少し体験しただけで物にしている感じがした。

自分の能力が格段に上がるから、普通の人なら慣れるまで時間が掛るはずだけど


「よっし!」


リズちゃんはすぐにその上昇した自分自身の能力を物にして

クリムゾンタイガーにぶつかる事無く、ギリギリで動きを止めている。

慣れていなかったら寸前で止めるのは少し難しいのに。


「はは! 上だよ!」


跳躍に関しても完全に力加減が出来ている。

自分が跳ぼうと思った距離まで跳んでるって感じだった。

これも、バフが掛った状態だと難しい筈なのに。


その状態でクリムゾンタイガーの背中に乗ってロデオをしてる。

クリムゾンタイガーは完全に背中の上に座ってるリズちゃんばかりに気が向いてる。


やっぱりリズちゃんの身体能力や適応能力は凄い。

長年戦ってきた兵士とかに匹敵するクラスだと思う。

そして、立ち回りも私が望んだ通り!


「マジックアロー!」


リズちゃんの方に注意を向けていたクリムゾンタイガーは

私の攻撃に気付くのがおくれた。

でも。致命傷は避けられるくらいの距離…

やっぱり、もっと他に何か無いと。


「あなたはそこでお座りだよ!」

「うぇ!?」


クリムゾンタイガーがマジックアローを避けようとした瞬間に

リズちゃんはクリムゾンタイガーの背中を思いっきり蹴って跳躍した。

その行動は少し予想外…でも、脚力強化の状態での蹴りは

クリムゾンタイガーの動きを遅らせるには十分すぎる効果があった。


「が…」


リズちゃんの跳躍で怯んだクリムゾンタイガーは私の攻撃を避ける事が出来なかった。

私が放ったマジックアローはそのままクリムゾンタイガーの胸部を貫く。

だけど、そこは魔物。人間なら即死級だけど、まだ動ける状態みたい。


「完全に当ってるのに…まだ動けるんだ」

「次で絶対に」


次に行なう攻撃の為に魔法の準備をして居る最中

クリムゾンタイガーは自分の死を察したのか

最後の力を振り絞って、リズちゃんに向って火球を放った。


「なぁ!」


リズちゃんは完全に油断してたのか、その場から動けない状態になっている。


「リズちゃん!」


私はすぐにテレポートでリズちゃんの前へ移動。

そのままドレインフィールドで火球を防ぎ、かき消した。


「これ…え!?」


火球が消え、私の視界に映ったのは

こっちに飛びかかってきているクリムゾンタイガーの姿だった。

あの火球は囮…避けられても、防がれてもすぐに自分で仕留めるつもりだったんだ!

侮ってた、ただの獣だと思ってたけど、そんな知性が働くなんて。

追い詰められた獣には油断するなとは聞いた気がするけど、まさか本当に!


「うりゃぁああ!」


だけど、クリムゾンタイガーの攻撃は私には届かなかった。

リズちゃんが私の前に姿を見せ、

接近してくるクリムゾンタイガーにサマーソルトを決めた。


脚力が強化されている状態での一撃。

瀕死の状態だったクリムゾンタイガーは流石にこの一撃を耐えきれなかった。

例え耐えたとしても、もう動く体力は無い。


この一撃で高く打ち上げられ、地面に叩き付けられては

胸部の致命傷も相まって、動けなくなるのは必然なんだから。


「あ、危なかった…エルちゃん、怪我は無い!?」

「う、うん…ありがとう、私は大丈夫。だけど、リズちゃんの方は怪我してるね」

「あ、本当だ…足から血が出てる」


向こうもあの状態だけど、僅かに抵抗をしたみたいだった。

最後の最後まで必死に抗って来るなんて…放っておいたらどうなってたか。


「リズちゃん、足見せて」

「うん」


私は回復魔法でリズちゃんの足の怪我を癒やす。

些細な怪我だったとしても、そこから悪化する可能性があるんだから

すぐに対処するのが正しい判断だよね。


「ふぅ、ありがとう。痛くなくなったよ!」

「これ位は任せてよ、それより足は大丈夫?」

「え? エルちゃんが治してくれたから大丈夫だけど」

「怪我の方じゃなくて、強化された方だよ。ちゃんと加減はしたけど」

「あぁ、それなら全然平気! もっと強化しても大丈夫だよ!」

「そうなの?」

「うん! 何だか最近、身体もドンドン軽くなって行ってるし

 これからもっと強化されても大丈夫なように身体も鍛えるからね!

 今日だってさ、さっき倒したら身体が少し軽くなったからね!」

「やっぱり安心したから身体が軽くなったって事だよね」

「多分そうだと思う!」


私もあのクリムゾンタイガーの魔力を吸収したからなのか、身体は軽い。

やっぱり魔力を奪える能力って言うのは便利だよね。

連戦になったら本当に強い。ブレイカーと戦ったときにそれが実感できたよ。

でもとにかく、これで卒業試験は合格かな。

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