第九十七回
「もしもし、佃です。この間はどうも…。実はお訊ねの一件、どうやら原因が掴めました。お暇な折りに研究所へお越し下さい。ご説明させていただきます」
「ああ、はい。では土、日の周りにでも寄せていただきます。時間は改めて、こちらからお電話をさし上げますので…」
「そうですか。それじゃ、そうなさって下さい。夜間以外は年柄年中、私、研究所にいますから…」
「はい。どうも、ありがとうございました」
電話を切った上山の心は、急に溌剌と高揚して昂りをみせた。
上山が佃教授の研究所を訪ねたのは日曜の朝だった。前夜、披露宴の文面を考えていたから、少し寝不足ぎみだったが、それでも目覚めたのは六時前だった。それだけ気がかりになっていた、ということもある。研究所へは九時にと云ってあるから、たっぷり時間はあった。佃教授の電話や日曜日に研究所へ行くことは幽霊平林には伏せてあった。どういう訳か、今回は呼ばない方がいいように上山には思えたのだ。日曜の前の数日も幽霊平林を呼んでいなかったから、そう目立った動きではなかった。
「や、来られましたか…」
佃教授は研究所の中で上山を待っていた。九時には、まだ十分ばかりあった。助手の姿は、この前と違って一人も見えなかった。
「どうも…。さっそくですが、原因が掴めたそうですが!」
意気込んで上山は云った。
「まあまあ…。今、買ったばかりです」
佃教授は入口の自動販売機で出した二本の缶コーヒーの一本を上山に差し出しながら笑顔で云った。




