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第八十九回

『また興奮されたようですね。課長、安心して下さい。これは一過性のものです。決して、死にかけているとかそういうんじゃないんですよ』

 幽霊平林はなだめるように云った。

「まあ、いい…。君の云うことを信じよう。それで、私は、どうすりゃいいんだ?」

『だから、何かの行動で、課長がそうなられたことは確かなんです。ただ、北枕で寝られた、ということが直接の原因なのかは、僕には分りません』

「そんな、あやふやな…」

『まあ、僕の霊界の知り合いにそれとなくいておきますがね』

「ああ、…それは頼むよ。で、私は会社へ行って仕事をしてりゃいいんだろうか?」

『人間界と霊界の間におられる課長ですが、果して、人間界との接点が上手くいくのかどうか、僕にも分かりませんよ』

「今日は、昨日の続きをやってみるよ。で、どうなるかだ…。出水君も岬君も海堂君も、誰もいないんだからな。いや、いるが、私には見えないんだからな…」

『そういうことです。ここは、やるしかないでしょう。僕もいますし…』

「北枕だけの原因かどうかは別として、問題は元へ戻るか、どうかだな…」

 上山はおもむろに幽霊平林へ云った。

『原因がそれだけなら、取りえず、先ほど云われたようにやって戴くしかないですね』

「…うん」

 上山にしては素直に云った。というのも、やはり多少の不安感がつき纏っていたからである。

『じゃあ、消えます! お邪魔しました』

「ははは…。じゃあ、消えますってのが、いいよな。でもな、マジックじゃないんだから、消えますはおかしいぜ」

『ああ、そうですね。失礼しました。では、また首を回して下さい』

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