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第八十一回

 幽霊平林は、いったいなぜ上山にだけ見えるの? というか、そもそも他の死者達と違い、平林だけが、なぜこの世にさ迷っているのか? という素朴な疑問は解かれることもないまま五月も終わろうとしていた。六月末だと岬に云われていた披露宴までにはちょうどひと月だった。会場での挨拶が多少、気になった。それまでに何かの手がかりらしきものだけでも入手したい…と上山は思っていた。頼りのつくだ教授はあやしげなゴーステンという物質を用いて制作した霊動感知機のデータ取りに余念がない。彼は唯一の理解者だが、成果のない研究結果の現状だけがくやまれ、上山は当てに出来ずにいた。

 次の日、上山に朗報がもたらされた。それは幽霊平林からであった。その日も上山はいつものように目覚め、そしていつものように同じ繰り返しのワンパターンで出勤までの家の雑事や身支度をしていた。むろん、食事は簡略に済ませるつもりでいた。というのも、会社到着までの時間を考えれば、そうゆったりと食事をする余裕はなかったからである。上山としては決して急いでるつもりはなかったし、またゆったりしているという気分でもない。云わば、普通のリズムでのワンパターンだったのである。そんな上山がコーヒーを飲み終え、新聞を閉じた時である。幽霊平林が不意に現れた。上山としては、まさか家へ現れようとは思っていない想定外の事態であり、幾らか驚いた。とはいっても、行動を乱すほどの乱れようではない。

「ど、どうした! 君。ここへは現れないってこっちゃなかったのか?」

『すみません…。そのつもりだったのですが、お出かけ前にどうしてもお伝えせねばならない事態が起きたものですから…。課長が僕のようにスゥーっと動く存在になってもらってからでは困りますから…』

「えっ? どういうこと?」

『なんでもいいですから、今日は二時間ばかり遅らせて家を出て下さい。訳は改めて云いますから! それじゃ…』

 幽霊平林はそう云うと、スゥーっと、さりげなく消え去った。

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