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第八十回

「ありがとうございます、と申しております」

「そうか…。まあ、今日はこの辺にしておこう。おい、そこにいる平林君、今後とも我が社のために、よろしく頼むぞ! 以上だ。もう帰ってくれてかまわんぞ」

「それでは…」

 上山は席を立つと田丸に一礼し、社長室をあとにした。当然、幽霊平林も上山の後方を流動する。

『社長、やっと僕の存在を認めてくれましたね』

「ああ…。まあ、よき理解者が一人、増えたと思って、素直に喜ぶしかないな」

『これで僕達二人以外に、滑川なめかわ教授、つくだ教授、社長の三人が加わりましたね。現在、五人です』

「そういうことだな…。だが、私達の謎を解明する手立てが見つからん」

『それもそうです。つい、僕達のことを忘れてました』

「なにも、君が謝ることはない」

『ええ、そうなんですが…。お手上げですね』

「そうだな…」

『研究所でも今のところ分からないんですから、こりゃもう、コツコツと地道に調べるしかないですね』

「そういうことだ…」

 上山は課へ戻ると、机に置いた鞄を手に帰途についた。この時、すでに幽霊平林

は前ぶれもなく消え去っていた。上山にとって幽霊平林のことは気がかりではあったが、すでに馴れてきたせいもあってか、半分方、もうどうでもいいや…との想いに襲われつつあった。上山は幽霊平林との関係をすでに二人と思っていた。正確には一人と一霊なのだが、見えて話せる今の現状は、彼を人間と認められた。ただ、平林は足がなく、宙にプカリプカリと浮かんだり、スゥ~っと流れ動いたり消えたりする違いがあるだけだった。それさえ気にしなければ、一人と見えなくはなかった。

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