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第七十三回

 二人は馴れ合いの漫才のように、流暢りゅうちょうに話し続けた。幽霊平林は、ただじっと二人の話に聞き入るだけである。そして、欠伸をひとつした。それが見える上山には、幽霊平林が、どうも俗っぽい幽霊に思えるのだった。上山にとって幸いなことに、以前のように幽霊平林が自分の目と鼻の先にいる緊張状態が消えたことである。今、こうして岬と話していても、幽霊平林は無と思えるから、すんなり話せるし、緊張感もなかった。岬が渡した案内状には、海堂亜沙美との婚礼の日程表も挟まれていた。

「ああ、そうそう、くのを忘れるところだったよ。あれから、出水君の嫌がらせは、どうなってんの?」

「ああ…、あのことですか。お蔭さまで嫌味を云われることもなくなりました」

「そうか、それはよかった。私が釘を刺しておいたからなあ…」

 軽く礼をし、微笑んで岬は自席へ戻っていった。

『出水は僕と同期ですが、確かに嫌な奴でした』

「ほう、そうだったの? 君も…」

 云ってからあわてて案内状を口元へと運ぶ上山だった。運よく、上山の独り言を云う様子に気づいた課員はいないようだった。そうはいっても、口を案内状で覆い隠した姿勢のまま話し続けていれば、課員の誰かが気づくのは必定だった。上山は、やはり、ここでの会話はきついな…と思った。そんな時、ほん前の係長席、とはいっても、上山から数メートルは離れているのだが、その席に座る係長の出水が咳払いをした。しまった! 聞こえたか…と、上山は一瞬、ギクリとした。出水は係長席に座ったまま首だけを後ろへ回し、上山を見た。

「課長! プライベートの電話は、昼にして下さいよ。皆が見てるんですから…」

「あっ! ああ…。いや、悪い悪い。急用だったもんでな」

 上山はたしなめられたことに気分を害すことなく、むしろ気づかれなかった安心感からか、ほっと胸を撫で下ろした。

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