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第七回

「上山ちゃん、少し元気がないわね」

 年格好は上山と相応の、食堂の江藤吹恵えとうふきえが食券を受け取りながら上山へ、ひと声かけた。

「ああ…、ちょっとここ最近、目がかすんでねえ…」

「老眼?」

「馬鹿を云いなさんな」

 吹恵は上山が入社した頃にはすでにいた顔馴染みだった。

「じゃあ、疲れてんだ。気をつけないとね…。ふふふ、でも、もう年よ」

 慰めるでなく、吹恵はそう云った。

「ありがと…」

 吹恵は社内で唯一、忠言してくれる存在であり、上山としては心が癒される瞬間でもあった。

 配膳皿が整うのを待って上山がテーブルへ持って進むと、やはり課長という肩書からなのか、社員達は一ヶ所だけ必ず空けているゾーンがあった。多くの社員が出入りする食堂で、そこだけが或る種、神聖な立ち入り禁止区域のように、誰もが避けて座らないのである。むろん、上山以外の取締役や他の課長、部長連中もそこへ座るのだが…。この日は、上山の他に社内トップはいなかった。

 注文したB定食などは、もう上山にすればあぶらっこいのだ。吹恵に云われるまでもなく、そういう年になっていた。それでも食堂で顔馴染みの吹恵に「B定!」と決まって云うのは、まだ自分が年をとってないぞ…と自己主張している証拠だった。吹恵は上山とほぼ変わらない年だから、余計に…と思えなくもなかった。上山が座ったゾーンは社員達が意識して空けている…というのでもなかったが、前述したように神域と目された空間で、そこへ陣どっても、別に上山が優越感に浸れる、という訳でもなかった。むしろ、返って自分だけが疎外されたような空虚な寂しさを感じる上山だった。

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