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第三十六回

「なにっ! 安眠枕だとっ! …そんなもん考えたこともないぞ! んっ? …そういや、枕に電磁誘導コイルを仕込んだのを持ってきおったことがあったわい…。その枕か?」

「はい! まさしく、その枕の製造元の田丸工業でございます」

「奇妙な実験をさせおったからのう…あの会社。おい! その会社の者か!」

 滑川なめかわ教授の機嫌は、いっこうよくなる気配がなかった。

「そ、その通りでございます、はい」

 低姿勢一辺倒で、上山は話し続けた。

「で、その田丸工業が、私に何の用だ! 確か…あの折りは結局、ボツになったではないか!」

「は、はい。あの節は…。いえ! そうではございません。ボツになったのではなく、時節到来まで待とうとお蔵入りになったのでございます」

「お蔵入り?! お蔵入りとは、結果的にボツと同じではないか!」

「はあ、それはまあ、そうでございますが…」

 上山は教授に責め立てられ、防戦一方であった。

「まあ、いい…。それで、私に、いったいどんな用があるというんだ。また、二束三文の商品開発に手を貸せというんなら断っておく!」

「いいえ、今回はそのようなことではございません」

「ほう、ならば、いったい、どういう用件なんだ!」

「はい、実は今、先生がご研究されていることについて、我が社と致しましては、かなり興味を持っておりまして…」

「この私の研究を、君達が知っておると云うのかね。世間には一切、口外していない研究を?」

「いやあ、そう云われますと、なんなんですが…」

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