表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
334/338

三章 第百一回

 その時、置時計の横にあった携帯が鳴った。

「…はい。なにか用かい? こんな早く…」

 不平っぽく上山は電話に出た。着信は、同じ会社の岬からだった。

「あっ! 課長。朝早くから、すみません。なんか、どうしても云っておきたくなりまして、迷惑を承知で電話をしました」

「そうか…、まあいい。で、云っておきたいことって、いったい何だね?」

「はい。実は、妻の亜沙美が妊娠しまして…」

「ほお! 亜沙美君が。そりゃ、お目出度い話じゃないか。仲人なこうどの私としちゃうれしい限りだが…、それにしてもこの話、そんなに急ぐことかい? 会社でもいいんじゃないか?」

「はあ、よく考えてみりゃ、そうなんですが。どうしてもお電話したくなりまして…。そこんとこが、不思議なんですが…」

「確かにそうだな…。まあ詳しいことは社で聞こう。じゃあ、切るぞ…」

 上山は、まだ眠気があったためか、少し無愛想に携帯を切った。

 その日、出勤した上山を岬は通用門で待ち構えていた。

「おお! おはよう。…なんか、逼迫ひっぱくした感じだな、こんな所で…。電話じゃ、亜沙美君の、おめでただったよな?」

「ええ、そうなんですが…、どういう訳か一刻も早く直接、課長に話さないといけない、って気持が消えなかったんですよ」

「なんだ、それは…。トラウマか?」

 上山は通用門からエントランスの入口ドアへ歩を進めながら、そう云った。当然、並んで岬も上山に付き従うように歩んだ。エントランスには早出らしき受付嬢の社員が二名いる他は、まだ誰も出勤していないようで、ひっそりと静まり返っていた。上山も岬も受付嬢に軽く会釈しただけで沈黙してエレベーター位置まで進んでいった。二人が、ふたたび話し始めたのは、エレベーターに乗り、ドアが閉じた瞬間である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ