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三章 第百二回

「いえ、俄かに、そうなったんで、トラウマじゃ…」

「んっ? …、亜沙美君の具合はどうだい?」

「ああ、妻は至って元気なんですが…」

 この時、ふと上山の脳裡に幽霊平林の陰気に笑う顔が浮かんだ。上山は、ハッ! として、もしや…と思った。平林の昇華…が、ふと、浮かんだのだ。エレベーターが昇るにつれ次第に、ひょっとすると…と、上山の頭は巡った。その、ひょっととは、霊魂平林→亜沙美の構図である。やがて、エレベーターがチーンと鳴り、八階で止まった。ドアが左右に開き、上山と岬は無言で降りた。上山にすれば最初は心に浮かんだ素朴な疑問だったものが、次第に現実の可能性を濃くしていた。その思いは、業務第二課へ入ると益々、顕著になった。課内は、まだ誰も出社しておらず、上山と岬だけである。

「あのさ、亜沙美君に一度、会いたいんだけど、君んちの都合は、どうなんだよ」

「いやあ~、課長でしたら、いつでも歓待しますよ。なにせ、二人の仲人なこうどなんですから…」

「そおかぁ? …なら、近日中にうかがわせてもらうよ」

「どうぞどうぞ、いつでも…。いや、二、三日前に云っといてもらった方がいいですね。妻に手料理、作らせますから。結構、これが美味いんですよ…」

「ははは…、こりゃ、ダブリュのご馳走さまだ」

 二人は顔を見合わせて大笑いした。そこへ、ドカドカと他の課員達が出社してきた。上山は腕を見ながら、もうこんな時間か…と思った。

「じゃあ、そういうことで…」

「ああ、お邪魔するときは云うからな」

 上山の言葉を背に受けて、岬は自席へと遠ざかっていった。

 上山が岬のマンションを訪ねたのは、その週の日曜だった。メンタル面で、一刻も早く会いたい…という衝動が抑えられず、上山をかせたのだった。それが何故なのかは上山にも分からない。岬が妻の話を、なぜか話したくなったのと似通っていた。

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