二章 第百四回
上山はそう云うと、食べ終えた食器を持って洗い場へ行った。
『急がれなくて、いいんですか?』
「ああ…、今日は十一時に得意先とのプレゼンテーションと接待だしな」
上山が、いつもとは違い、急いでいない訳が分かり、幽霊平林は、なるほど…と得心したが、そんなことを考えてる場合じゃないと、すぐさま自分の散漫な心を反省した。念じるには心を集中させねばならない。上山は、そんな幽霊平林の心を慮ってか、それ以後は声をかけず、ひたすら食器を洗った。部屋の時計は八時近くを指していた。十時を回った頃に家を出るとして、まだ二時間ばかりある。この二時間があれば、幽霊平林に念じてもらうのは十分である。結果は、ともかくとして、内乱と紛争は解決に向かうだろう。他の民族間争乱、宗教対立による紛争などは次回以降に回すとして、すべての課題のうち、その一部を解決し、正義の味方としての最初の活動を成功させたといえる。上山としては初めての感慨であり、幽霊平林にとっては、霊界番人へ伝えられる初の成果と云えた。
『では、念じます!』
改まった声で幽霊平林が云い、如意の筆を手にして両瞼を静かに閉じた。上山に瞬間、緊張が走る。そして二分、三分と時は流れ、五分ばかりが経ったとき、幽霊平林はふたたび両瞼を静かに開くと、如意の筆を二、三度振った。この光景は上山も何度か目にしていていた。
『終わりました…』
「そうか、終わったか…。で、どうだろう?」
『それは僕にも分かりませんよ。孰れ、結果はマスコミに大きく報じられることでしょう』
「それまでは分からんか…」
『ええ…。なにせ、今回は規模が広いですから…』




