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二章 第二十二回

「おお、本当だとも! 詳しくは、昼休みにでも電話してくれ」

「はい!」

 上山はひと言、云うと、部下の手前、すぐ携帯を閉じた。相も変わらず、上から目線の滑川なめかわ教授だった。

 昼休みといっても社員達は上山の目の届くところに必ず何人かはいる。無人となれば、籠れるところが使われていない会議室、倉庫、屋上の一部などに限られていた。籠れるところといえば、トイレをおいて他にはない。手頃だが、社員に聞かれる恐れは多分にあった。そんなことで、上山はひらめいた第一会議室を選んだ。空いているのを知ってのことで、食堂でいつものように定食の食事を済ませ、人目を気にながら上山は中へ入った。スムースにいったのは、幽霊平林が現われないからだった。同じグルリと回す合図でも、肩凝りから癖になている首と、あらたに決めた手首とでは雲泥の差があった。

 上山は第一会議室へ入ろうと、右手に携帯を持ち、ドアのノブを回そうとした。だが生憎あいにく、右手に携帯を持っていたものだから、左手を使って回してしまった。これがウッカリミスで、幽霊平林がスゥ~っと姿を現した。

『はい、何でしょ?』

 瞬間、上山は、しまった! と思った。というのも、左手をグルリと回せば…が、合図だったからだ。グルリではないが、小さく回したことに違いはなかった。

「…、なんだ、君か」

『なんだ、君か、とは、ご挨拶ですねえ』

「いや、悪い悪い。そういうことじゃなく、呼んだんじゃなかったんだ」

『だって、左手を態々(わざわざ)、回されたんでしょ?』

「いや、それが違うんだ。…まあ、左手を回したことにゃ変わりないんだけどね」

『だから、回されたんじゃないですか』

「回したってことじゃなく、ノブを握ってひねっただけだよ」

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