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二章 第十回

「得心いかれましたかな?」

「えっ? ああ、はい…。夜分、すみませんでした。また、何ぞありましたら寄せていただきます」

「はあ、私でお役に立つことならば、なんなりと…」

 その後、しばらく窪地くぼちの土を手にして吟味し、上山は舞台寺ぶだいじを退去した。

「土の感触は、普通の土と変わりなかったがなあ…」

『はい、そのようですね。僕にもそう見えました』

「だろ? アレに通電しなけりゃ超常現象が起こらんのかなあ…」

『さあ? 僕には…』

 街路へと戻り、たずねた交番前を横切りながら、上山は幽霊平林にそう云った。住職に了解を得てもらったハンカチにくるんだ少しの土、これで恐らく何らかの突破口が開けるに違いないと上山は思っていた。この土は、つくだ教授の所へは持っていけないと刹那、思えた。と、なれば、上山にはもう一人の滑川なめかわ教授をおいて頼りになる学者はいなかった。

「今日は、もう遅い…。これまでにしよう」

『はい、それじゃ明日また…』

「ああ…、出来るだけ早く、首を回すよ」

『他人が聞けば、意味不明な会話ですよね』

「そうだな。首を回すってとこだけなら、たぶん変人に思われるだろうな」

 上山は陽気なオレンジ色で笑い、幽霊平林の方は陰気なブルーで楚々と笑った。

 次の日、いつものように出勤し、時が流れた。上山は仕事と並行して岬と亜沙美の披露宴で読む文面を修正していた。披露宴は、すでに十日後に迫っていたのである。そこへもってきて、舞台寺ぶだいじの土の一件がからんでいた。昨夜の土は、ハンカチごと鞄の底に忍ばせてあった。

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