表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/338

二章 第七回

「すみません。…私、つくだ教授の研究所でお世話になった田丸工業の上山と申します」

「はい…。佃さんは時折りお見えになりますから、よく知っております。それが、なにか?」

 奥の間から舞台寺ぶだいじの住職とおぼしき僧侶が現われ、そう云った。

「ご住職でございますか?」

「はい、さよで…」

「実は、佃教授が研究材料にされておられますお墓の土のことで、ちょっとおたずねしたいことが、ありましたもので…」

「ほう! こんな夜分に来られるくらいですから、お急ぎのご用か、のっぴきならんことなんでしょうな」

「いやあ…、それを云われると、お恥かしい限りでして。…実は明日あすでも明後日あさってでもよかったのですが…。思い立ったら済ませたい性分が邪魔を致しまして、こんな時分に…」

 上山は、ははは…と愛想笑いをして誤魔化した。幽霊平林は完全に野次馬気分で、天井近くまで浮き上がって三人を見下ろしていた。

「そうですか…。で、どういった?」

「ええ、ですから、佃さんが研究に使われているお墓の土なんですが、どのようなものか、少しおきしたいと思いまして…」

「ああ、さよでしたか。いえね…、私の寺の墓地は、ご覧になれば分かると思いますが、かなり広い敷地でしてね。それに、この寺は、かなりの歴史がある古刹こさつでして…」

「ええ、それが…」

「私にも分からないような無縁仏さまのお墓もございます」

「はい…」

「そのお墓も、幾度も改葬されておりまして、現在では空き地になっておるのでございますが…。で、その土地も、かつては無縁仏さまのお墓であったろうと推察されまして…」

「そこが、つくだ教授の?」

「ええ、そこの土地を、ほんのわずかずつですが、ご研究に使われておる、というようなことでして…」

「なるほど…、そういうことでしたか」

「これから、その場所、ご覧になられますか? もう暗うございますが、よろしければ…」

「えっ? はい、出来ましたら…」

 住職はあがかまちから下へ雪駄を履いて下りると、上山を先導しようとした。

「あっ! あなた、これっ!」

 住職の妻と判明した中年女が、入口に置かれた手提灯てぢょうちんを住職に手渡そうと駆け寄った。住職は、それ受け取ると、慣れた仕草で中の蝋燭ろうそくに火をつけて歩きだした。懐中電灯ではない古風な所作に、上山はこの寺の歴史の深さを感じながら後ろに続いた。上手い具合に興奮の度合いが下がり、頭上の青火が消えた幽霊平林も、その上山に合わせてスゥ~っと流れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ