第百十二回
「じゃあ、先ほどの話ですが、配合されておられたときに何かあったんでしょうか?」
「ええ…。それ以外、私も思い当たる節がないんです」
「虚脱感じゃなく、身体の虚脱状態ですね?」
「はい、そういうことです。食欲もありますし、体調は他に、これといって悪いと思えるところはないんですよ」
「そうですか…」
上山は佃教授の言葉に頷くほかはなかった。
「ところで、私を訪ねられた訳は?」
「そう、それでした。つい、うっかり肝心のことを訊き逃すつころで…。実は、前にも云ったと思うんですが、平林君の調子が今一なので、先生に報告方々、お訊ねしようと…」
「ああ…、いつぞやの幽霊さんですか?」
「はあ、まあ…」
「どこか、お悪いんですか?」
「ははは…。平林君は死んでおるんですから、悪い、って云われるのも、なんなんですが…。まあ、調子が悪いと」
「ははは…そうでした。で、どのように?」
「止まれないらしいんですよ、安定して」
「止まれない? 止まれないって、止まらないんですよね?」
「ええ、身体が停止しない、ってことです」
「それは幽霊として致命的なことなんでしょうね? …幽霊さんに致命的というのも、なんなんですが、ははは…」
「メンタル面、いわゆる心理的に安らげないそうなんです」
「どこか、私の状況に似てませんか? それ」
「えっ? ああ、そう云われてみますと…」
「やはり、ゴーステンですなあ…。あれが何らかの作用をもたらした、としか考えようがありません。こうして寝ている私が云うのもなんなんですが…」




