第百十三回
その時、幽霊平林が、いつものように予期せずパッ! っと、現れた。
「なんだ、君! 約束が違うじゃないかっ、首は回してないぜ!」
「エッ!?」
急に空間の一点を見ながら独り言を云いだした上山に、佃教授は思わず驚きの声を上げた。
「あっ! すみません。平林君が今、現れたもんで…」
上山は佃教授を急遽、見直して、取り繕った。
『こちらも、すいません、課長』
「…まあ、いい。佃教授もいらっしゃるから、返って都合いいしな」
『教授はどうおっしゃっておられるんでしょ?』
「ああ、やはりゴーステンのようだと…。それに教授の症状も違いこそあれ似通ってらっしゃるそうだ。ね? 教授?」
「えっ? ああ、そうです。幽霊の平林さんは今、その辺りにおられるんですか?」
佃教授は上山が話す目線の先を注視していたのか、その方向を指さした。
「はい、仰せの通り、その方向に浮かんでおります」
「浮かんでおります、か。こりゃいい、ははは…」
佃教授の笑いに釣られて上山も笑い、当の本人の幽霊平林も笑いに巻き込まれた。むろん、幽霊平林の笑い声は佃教授に聞こえない。
「そういや、君が研究所に現れたとき、霊動感知機の針が激しく振れたんだったね?」
『ええ、確かそうだったと思います。それに、オレンジのランプが点滅してましたね』
「? …彼は何を云ってるんですか?」
上山は空間を見て話しているが、佃教授には幽霊平林の声は耳に入っていない。
「そうだったと…。それに、オレンジのランプが点滅していたも…」
「なるほど…。平林さんも研究所へ現れていたんですね。そうしますと、やはりゴーステンの影響でしょうか」




