書籍15巻 発売記念SS『老王の日常』
本日発売!
――――空を見上げながら ピゲル
メーアやヤギの世話をしながら空を見上げると、太陽で温められた空気を浴びながら宙を舞う、鷹人族の姿が視界に入り込む。
優雅に自由に空を舞い飛ぶその背には、鼠人族達の姿があって……ピゲルはそれを羨ましく思う。
その生まれから多くのものを見た、見たくもないものも見てきた、老いてもうこれ以上新しいものを見ることはないだろうと思いこんでいたが、この草原に来てからは見てみたいものばかりだ。
獣人国の独特の文化が織りなす光景、海の向こうにあるという新世界、空から見下ろすこの世界。
他にも多くのものを見てみたいと欲が湧いてくるが、老いたこの身では難しいことも多く……しかしそれが心地良い。
誰だってそういった欲を抱えているもので、そしてそれを受け入れているもの。
かつての立場では見えてこなかったその視点がどういう訳か心地よく感じてしまって……草原に吹く風が心地よさを倍増させてくれる。
そうやって心地よさを味わったなら視線を足元に下ろし、ブラッシングをしてくれと視線を向けてくるメーア達に向き合う。
「すまなかったな」
と、そう声をかけたなら腰に下げた袋に入れてあるブラシを手に取り、ブラッシングをしていく。
そうしながらピゲルはメーア達に様々なことを語りかける。
たとえば生とは死とは、善とは悪とは、政治とは王たるものとは、そもそもこの世界とは何なのか、モンスターは何故人を襲うのか……などなど。
家畜相手となるとその語りかけはただただ無意味なものになるが、
「メァ~メァメァメァ~」
「メァメァ~~」
「メァ~~メァ」
などなど、メーア達は様々な哲学的な答えを返してくれる。
それは的を射ていることもあれば、ピゲルには理解しきれないレベルの内容のこともあるが、どんな答えが返ってきたとしてもピゲルにとっては嬉しいことであり、会話はどんどん弾んでいく。
そんな中でヤギは、会話の内容を全く理解していない訳だが、それでも周囲からメァメァと声が上がれば、
「ベェ~~~」
と、声を返す。
すると一斉に周囲から笑い声が広がり……ただそれだけの時間が流れていく。
そしてそんな光景を見てなのか、上空の鷹人族が高度を下げてきて……その背に乗ったエイマが声をかけてくる。
「楽しそうですねぇ、何のお話をされていたんですか?」
「そうだねぇ、生と死、善と悪、切っては切れぬ裏表に関する哲学的問いかけに関する問答かな」
まさかそう返されるとは思っていなかったのだろう、エイマはただただ目を丸くし、その様子が面白くてピゲルは、もう一笑いしてしまうのだった。
お読みいただきありがとうございました。
15巻『老王の来訪』!
アニメ化前増量ページの記念的な一冊となっておりますので、ぜひぜひ手にとっていただければと思います!!






