第三話 GO WEST!!
稲作が始まってから、長い年月が流れた。
東アジアでは稲作が広がり、猿たちはムラを作って暮らすようになっていた。
ムラが増えれば、領民も増える。
そして、領民が増えれば、守るべきものも増えていく。
ある日、稲を奪おうとする猿たちと、それを守ろうとする猿たちが争い始めた。
どうやら、稲作を覚えた猿たちは、食料を奪い合うことまで覚えてしまったらしい。
その様子を眺めていたコメは、首をかしげた。
「あの猿たち、お米のために戦ってるのか、自分たちのために戦ってるのか分かってないみたいね」
そして、ちょっと言ってみたかったセリフを口にした。
「私のために戦うのはやめてー!」
「コメ様。彼らは、自分たちの稲を守っているのだと思いますが……」
「えっ? そうなの?」
コメは首をかしげた。
「まあ、どっちでもいいけど!」
白飯は、少しだけ困った顔をした。
こうして東アジアでは、猿たちが争いを繰り返しながらも、稲作は着実に広がっていった。
気がつけば、東アジアはコメの勢力圏となっていたのである。
そして、ある日。
「ねえ、白飯ちゃん!」
「はい、コメ様」
「次は西の方にも勢力を広げようと思うの!」
「は、はぁ……」
「だって、あっちにも土地はいっぱいあるんでしょ? だったら、そこでもお米を育ててもらえばいいじゃない!」
コメは自信満々に胸を張った。
「あんなに土地があるんだから、いけるっしょ!」
「は、はぁ……」
白飯は、よく分からないまま頷いた。
それから数年後。
「……あれ?」
コメと白飯は、西の土地を訪れて首をかしげた。
「白飯ちゃん、稲が枯れてるよ?」
「そ、そうですね……」
二人が持ち込んだ稲の苗は、見事に枯れ果てていた。
「なんでー!?」
コメが叫んだ。
「せっかく稲の苗を持ってきたのに! どうして全部枯れちゃったの!?」
近くでは、現地の猿たちがのんびりと暮らしていた。
「……あれ?」
コメは猿たちを見つめた。
「この子たち、稲が枯れても全然困ってない……」
「そうですね……」
二人が首をかしげていると、突然、背後から声がした。
「騒がしいな」
「えっ?」
コメと白飯が振り返る。
そこには、金色の髪をした背の高い女性が立っていた。
「だ、誰?」
コメが尋ねると、女性は涼しい顔で答えた。
「私かい? 私はムギ。この辺りの者たちを見守っている」
「ムギ……?」
コメは、目の前の女性をじっと見つめた。
「ねえ、ムギちゃん。この辺りって、お米が育たないの?」
「お米? ああ、君たちが持ち込んだあの稲か」
ムギは、枯れた苗に目を向けた。
「この土地では、君のお米はうまく育たないようだね」
「えええええっ!?」
コメは目を見開いた。
「なんでー!?」
ムギは、そんなコメを見て小さく笑った。
「それに、お米なんか食べなくても、麦があるのだよ」
「む、麦?」
コメが首をかしげた、そのとき。
「その通りです、ムギ様!」
勢いよく声を上げたのは、ひとりの少女だった。
「我らの領地に、ムギ様以外の穀物は不要! お米など必要ありません!」
少女は得意げに胸を張った。
「私はオートミール将軍! ムギ様の偉大なる勢力を支える者です!」
「えええええっ!? な、なにその言い方ぁ!」
コメは思わず声を上げた。
「お米だって、おいしいんだからね!」
「ふん! この土地には麦があるのです!」
オートミールは、これでもかというほど得意げに言い放った。
「ねえ、白飯ちゃん……」
「はい、コメ様」
「もしかして、ムギちゃんも私たちと同じように、お猿さんたちに麦を作ってもらってるのかな?」
「そうかもしれませんね……」




