第十三話 可愛いと甘いは正義?
「甘いものって、正義だと思わない?」
「わかるーーー!!」
コメとトウモロコシは、すっかり盛り上がっていた。
「私の大陸では、蜂蜜が美味しいですよ!」
「ウチは果物ー! 柿とかアケビとか、甘くて美味しいんだから!」
「なんか、甘いものの話をしてると、女の子って気がするよねー!」
「わかります! 普段は領土がどうとか、穀物の勢力争いばかりですからね!」
二人は顔を見合わせて笑った。
「……君たち、何の話をしているんだ?」
そこへムギがやってきた。
「甘いものっていいよねー、って話!」
「なるほど。確かに、甘いものはいいな」
「ムギちゃんのところにも、甘いものってあるの?」
「もちろんだ。では、こういうのはどうだ? おい!」
ムギが呼びかけると、一人の少女がやってきた。
「麦芽糖は、幸せを届けます!」
「ええっ!? 自分で作れるのー!?」
コメは驚きの声を上げた。
「そうだ。穀物から甘味を作ることもできる」
「ちょっと待ちなさいよ!」
トウモロコシが慌てて口を挟んだ。
「穀物は主食でしょう? 甘味はデザート。そこには役割分担というものがあるはずよ! 穀物が甘味まで担当するなんて、役割というものをわかっていないわ!」
「……頭の固い女だな。面倒くさくて頭の固い女は、幸せになれんぞ」
「ぐはぁっ!!」
トウモロコシは胸を押さえ、よろめいた。
「な、なんてことを言うのよ……! 私だって、幸せになりたいわよ……!」
「なら、もう少し柔軟に考えることだな」
ムギは麦芽糖に目を向けた。
「麦芽糖、もう一度挨拶をしてくれ」
「麦芽糖は、幸せを届けます!」
麦芽糖はニッコリと笑った。
「ううっ……! その笑顔が、今はまぶしい……!」
トウモロコシは、さらに深いダメージを受けた。
一方、コメは麦芽糖を見つめて目を輝かせていた。
「麦芽糖ちゃん、すっごく可愛いね!」
「ありがとうございます!」
「やっぱり、可愛いは正義だよね!」
「はい! 可愛いは正義です!」
「わかってるじゃない、麦芽糖ちゃん!」
二人はすっかり意気投合していた。
「ちょっと! コメちゃんまで、そっち側に行くの!?」
トウモロコシの叫びも、二人には届いていなかった。
「麦芽糖ちゃん、これからも仲良くしようねー!」
「はい! よろしくお願いします!」
コメと麦芽糖が笑顔で手を取り合った、その時だった。
ドゴォォォン!!
突然、背後で爆発が起こった。
「な、何事!?」
煙の中から、一人の少女が姿を現す。
「私は水飴姫、幸せを届けます」
「えええっ!? また可愛い子が出てきたーーー!!」
コメは目を輝かせた。
「麦芽糖ちゃん、し、姉妹なの?」
「そうですー!」
「やっぱりーーー!!」
コメは二人を見比べ、満面の笑みを浮かべた。
「可愛い姉妹! 最高だよーーー!!」
「コメちゃん! あなたまで裏切るのーーー!?」
トウモロコシが叫んだ。
「裏切り者ーーー!!」
しかし、コメと水飴姫はすっかり二人の世界に入り込んでいた。
「水飴姫ちゃんも可愛いねー!」
「ありがとうございますー!」
「これから仲良くしようねー!」
「はいー!」
「裏切り者ーーー!!」
トウモロコシの叫びが響き渡る。
だが、誰も聞いていなかった。
こうして、コメとムギの陣営は、甘味という新たな武将を手に入れた。
主食だけではなく、甘味までもが穀物の勢力拡大に貢献することとなったのである。
一方、甘味の勢力を手に入れ損ねたトウモロコシ陣営。
果たして、苦戦を強いられることとなる彼女たちの今後はいかに――。




