第十二話 メガネは正義
アメリカ大陸。
トウモロコシは、妹分のコーンミールと話をしていた。
「ねえ、コーンミール。私って、コメちゃんやムギちゃんと比べて、キャラが薄くない?」
「……はい?」
「ムギちゃんは金髪高身長美女、コメちゃんは幼児体型で騒がしいし。それに比べて私は……メガネ美少女なのに!」
「……そうですね」
「メガネ美少女が正義だって、みんな知らないのかしら!?」
コーンミールは少し考えてから言った。
「アンケートを見てみますか?」
「そうね! 民の声を聞くのも大切よ!」
二人はアンケートの結果を確認した。
『毎日コーンミールはあきる』
『毎日メガネはあきる』
『たまには目先を変えたいなぁ』
「…………」
「…………」
「この猿どもがぁぁぁ!!」
二人の怒声が、アメリカ大陸に響き渡った。
二人は、ひとしきり怒り続けた。
「まったく、失礼な猿どもね!」
「本当ですよ、トウモロコシ様!」
しかし、しばらくしてトウモロコシは考え込んだ。
「……でも、確かに目先を変えるのは大事かもしれないわね」
「と、言いますと?」
「コーンミール。ちょっと、あなたを焼いてみましょう」
「……はい?」
「焼くという概念を、猿たちに与えるのよ!」
「なるほど……」
トウモロコシは、ふと眼鏡に手をかけた。
「そして私は、ちょっと眼鏡を外してみようかしら!」
コーンミールは、特に何も言わなかった。
「……よし!」
その瞬間――。
ドーン!!
眩い光の中から、一人の男が現れた。
すらりとした長身。知的な雰囲気を漂わせる、眼鏡をかけた美しい男神だった。
「私はトルティーヤ。トウモロコシ様のお力と、焼く力から生まれた武将です」
「んまぁーーー! その眼鏡、素敵よ!」
「本当ですわ! とてもお似合いです!」
トウモロコシとコーンミールは、二人そろって目を輝かせた。
トウモロコシは、さっそくトルティーヤ将軍を連れて、コメのもとへ向かった。
「あら? トウモロコシ、今日は眼鏡をどうしたの? 忘れたの?」
「ふふん、今日はイメチェンよ!」
「へえ?」
「そして、こちらが新たに誕生したトルティーヤ将軍よ!」
「私はトルティーヤ。トウモロコシ様のお力と、焼く力から生まれた武将です」
コメは、トルティーヤをじっと見つめた。
「……すらっとしてて、かっこいいわね」
「そうでしょう!? しかも、この眼鏡!」
トウモロコシは、嬉しそうにトルティーヤの眼鏡を指さした。
「ようやくメガネの素晴らしさを、世に知らしめることができるわ!」
「……ところで、トウモロコシ」
コメは、ふと気になったことを尋ねた。
「コーンミールを水で溶いて、焼いたの?」
「そうよ! 目先を変えるのも大切だと思ってね!」
「へえぇ! そんな方法があったのかぁ!」
コメは感心したように声を上げた。
「炊くだけじゃなくて、溶いて焼く……。なるほど、食べ方はいろいろあるのね!」
「そうでしょう? これでトウモロコシの可能性も、もっと広がるはずよ!」
「うーん、私も何か新しい食べ方を考えてみようかなぁ……」
「……まったく、騒がしいな」
後ろから声がした。
振り返ると、ムギが立っていた。
「あれ? トウモロコシ君、眼鏡を忘れたのか? 誰だかわからなかったぞ」
「なっ……!?」
トウモロコシの顔が引きつった。
「なんでみんな、イメチェンを褒めてくれないのよーーー!!」
「……相変わらず、面倒くさい女だな」
ムギは呆れたようにため息をついた。
「め、面倒くさい女ですって!?」
トウモロコシはムギに食ってかかろうとしたが、ふと思い出したように振り返った。
「……そんなことより、ごらんなさい!」
トウモロコシは、トルティーヤを指さした。
「メガネな上に美味しいんだから!」
「……なるほど。確かに、なかなか興味深いな」
ムギがトルティーヤを眺めていると、後ろから声がした。
「ほう。ここにいたのか」
振り返ると、一人の男が立っていた。
「兄さん!!」
トルティーヤが声を上げた。
「久しぶりだな、トルティーヤ」
現れたのは、パン将軍だった。
パン将軍は兄弟の長男。そして、トルティーヤは八番目の弟である。
「……なるほど。兄弟で別の陣営か。諸葛亮と諸葛瑾みたいだな」
ムギがうなずいた。
「またその誰だか分からない例え!?」
コメが叫んだ。
三女神は、改めてパン将軍を見つめた。
長身で堂々とした体格。落ち着いた物腰からも、ただ者ではないことが伝わってくる。
「……あれは、いずれ大将軍になるな」
ムギが感心したようにつぶやいた。
「ええ。今は将軍でも、将来は大将軍と呼ばれる器ね」
コメもうなずいた。
「さすが、長男というべきかしら……」
トウモロコシも認めざるを得なかった。
「くっ……! どうして私のところには、メガネ以外で目立つ要素がないのよーーー!!」
しかし、すぐにトウモロコシは顔を上げた。
「いいえ! メガネさえあればいいんだからーーー!!」
こうして、トウモロコシは今日もメガネの素晴らしさを世に広めようと奮闘するのであった。
一方、パン将軍はその後、世界中で好まれる大将軍へと成長していくことになる。
その活躍については、また別の機会に語るとしよう。




