SS 第3話 服選び大作戦
翌日。
ローズガーデンの商業区。
セリーヌ、リュカ、リリアの三人は、大きな洋服店を訪れていた。
「いらっしゃいませ!」
店員に迎えられ、店内へ入る。
色とりどりの洋服が並ぶ光景に、セリーヌは思わず目を丸くした。
「こんなにたくさん……」
「何を選べばいいんでしょう」
リリアがにっこり微笑む。
「大丈夫です」
「今日は私たちに任せてください」
最初にリリアが選んだのは、淡い桃色の可愛らしいワンピースだった。
着替え終えたセリーヌが試着室から姿を現す。
「ど、どうでしょう……」
ふわりと広がるスカート。
胸元には小さなリボン。
まるでお嬢様のような装いだった。
リュカは腕を組む。
「……子どもっぽいな」
リリアも苦笑する。
「可愛いですけど」
「先生は妹を見るような目になりそうですね」
セリーヌは肩を落とした。
「駄目ですかぁ……」
続いて選んだのは、大人っぽい紺色のワンピース。
髪も少しまとめ、落ち着いた雰囲気に仕上げる。
「おぉ」
リュカが感心したように頷く。
「一気に大人っぽくなったな」
リリアも笑顔になる。
「綺麗ですね」
セリーヌは少し照れながら尋ねた。
「先生……褒めてくれるでしょうか」
三人で少しだけ想像してみる。
『似合っている』
『今日は落ち着いた服だな』
「…………」
リュカはため息をついた。
「駄目だ」
「先生ならその程度しか言わない」
リリアも苦笑する。
「想像できてしまいますね……」
今度は動きやすいカジュアルな服。
「これはどうでしょう?」
リュカは即答した。
「普段着だな」
リリアも頷く。
「先生も『動きやすそうだな』で終わりそうです」
「ですよねぇ……」
セリーヌは再び肩を落とした。
続いて試したのは、上品なフォーマルドレス。
鏡の前へ立ったセリーヌは、自分でも驚くほど大人びた姿になっていた。
「わぁ……」
リリアは思わず拍手する。
「とても素敵です!」
リュカも満足そうに頷く。
「これはいいな」
「でも先生と舞踏会でもない限り着る機会がない」
「うぅ……」
その時だった。
リュカが店内の奥から一着の服を持ってきた。
少し胸元の開いた、大人っぽい服だった。
「最後はこれだ」
リリアは見るなり目を丸くする。
「兄さん!」
「何を持ってきたんですか!」
リュカは真面目な顔のまま答える。
「これを試してみろ」
「胸元を少し見せれば」
「流石の先生もイチコロだろ」
「兄さん!!」
リリアが真っ赤になって叫ぶ。
「そ、そんな破廉恥なこと言わないでください!」
セリーヌも耳まで真っ赤だった。
「む、無理ですぅぅぅ!!」
「こんな服で先生の前になんて立てません!!」
「恥ずかしすぎます!!」
その場にしゃがみ込み、両手で顔を隠してしまう。
リュカは苦笑する。
「先生攻略への道は遠いな」
リリアも肩をすくめた。
「まずはセリーヌの心臓を鍛える方が先ですね」
「うぅぅ……」
真っ赤な顔のまま、小さく頷くセリーヌ。
そんな三人の様子を見ていた店員は、思わずくすりと笑った。
「皆さん、本当に仲が良いんですね」
三人は顔を見合わせる。
そして同時に吹き出した。
「あははは!」
こうして『服選び作戦』は終始大騒ぎのまま幕を閉じた。
もちろん、その頃のアデラーンは。
そんな作戦が行われていることなど知る由もなく、道場で一人、黙々と薪を割っていたのだった。




