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第69話 急襲

 深夜。


 王都南西部の地下水路。


 騎士団本部に集結した討伐隊は、情報屋の案内を受け、地下深くへと進んでいた。


 先頭を歩くのはアデラーン。


 その隣にはセリーヌ。


 さらに、魔剣流師範代のリュカとリリア。


 そしてアーサー率いる王国騎士団と、大陸冒険者ギルドの精鋭たちが続く。


 誰一人として口を開かない。


 地下水路には、張り詰めた緊張感だけが漂っていた。


 やがて一行は最奥部へ辿り着く。


 古びた石壁。


 巧妙に隠された扉。


 その先には広大な地下空間が広がっていた。


 松明の灯り。


 武器庫。


 そして、黒装束の男たち。


 死告鳥の本拠地だった。


 アーサーは静かに剣を抜く。


「総員」


「突撃」


 その号令と同時に、騎士団が一斉に雪崩れ込む。


「敵襲!」


「騎士団だ!」


 地下アジトは瞬く間に戦場と化した。


 アデラーンは迷わず最前線へ踏み込む。


「暗黒」


 一瞬で間合いを詰める。


 剣が閃くたび、暗殺者たちは次々と倒れていく。


 その背を守るように、セリーヌも剣を振るう。


「先生の邪魔はさせません!」


 さらに、リュカとリリアも騎士団と連携しながら暗殺者たちへ斬り込んだ。


「魔剣流を舐めるな!」


「師範代の名は飾りじゃありません!」


 二人にとっては、師範代として挑む初めての大規模実戦だった。


 まだ経験では師に及ばない。


 それでも日々積み重ねてきた鍛錬は確かな力となり、暗殺者たちを圧倒していく。


 やがて戦況は完全に討伐隊優勢となった。


「首領を逃がすな!」


 アーサーの号令が地下空間へ響く。


 地下奥へ、一人の黒装束が駆け出した。


 アデラーンは迷うことなく追う。


 あと一歩。


 その距離まで迫った、次の瞬間だった。


 ゴゴゴゴゴ……。


 轟音とともに隠し通路の天井が崩れ落ちる。


 大量の瓦礫が通路を塞ぎ、アデラーンは咄嗟に身を引いた。


 剣で瓦礫を薙ぎ払う。


 しかし、その先に人影はなかった。


 地下深くへ遠ざかる足音だけが、静かに消えていく。


「……あと一歩だったか」


 アデラーンは静かに剣を納めた。


 それでも作戦は成功だった。


 死告鳥の本拠地は完全に制圧。


 生き残った構成員たちは次々と拘束され、地下施設の捜索が始まる。


 最奥部で発見された一つの金庫。


 中には大量の帳簿。


 資金の流れを記した記録。


 そして、多額の金貨が収められていた。


 アーサーは帳簿を手に取り、静かに呟く。


「これだけの資金……」


「死告鳥だけで用意できる額ではない」


 アデラーンも小さく頷く。


「ああ」


「必ず、裏で資金を流している者がいる」


 死告鳥は壊滅した。


 だが、本当の敵はまだ姿を現していない。


 王国を揺るがす陰謀は、ようやくその輪郭を見せ始めていた。

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