第67話 反省
死告鳥の襲撃から数日。
アーサーの光魔法『光治癒』によって毒は完全に浄化され、セリーヌはすっかり回復していた。
魔剣流道場。
朝稽古を終えた後、セリーヌは静かにアデラーンの前へ立つ。
「先生」
「……今回のこと、本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる。
アデラーンは何も言わず、その言葉を待った。
「私は……傲っていました」
「金ランク冒険者になって」
「先生から剣術を教わって」
「オリハルコンの剣まで手に入れて」
「いつの間にか、自分は強くなった気でいました」
セリーヌは拳を強く握り締める。
「だから、あんな単純な挟撃に……」
アデラーンは静かに首を横へ振った。
「……いや」
「お前は十分に強い」
その言葉に、セリーヌは顔を上げる。
「だが」
「今回の件で分かっただろう」
アデラーンは真っ直ぐ弟子を見つめた。
「相手が格下であっても」
「実戦は、刹那の油断が命取りとなる」
「そのことを、夢々忘れるな」
その言葉には、何十年もの実戦を生き抜いてきた重みがあった。
セリーヌは静かに頷く。
「……はい」
しばらく沈黙が流れる。
やがてアデラーンは小さく息を吐き、視線を落とした。
「お前に、もしものことがあったら……」
その先の言葉は続かなかった。
苦虫を噛み潰したような表情。
そんな先生の姿を、セリーヌは初めて見た。
(こんなこと思ったら駄目なんだけど……)
(先生……)
(私のことを、そんなに大切に思ってくれているんですね)
胸の奥が温かくなる。
アデラーンはゆっくりと顔を上げた。
「……とにかく」
「お前は俺の元を離れるな」
セリーヌは優しく微笑み、小さく頷く。
「はい」
(一生、離れません)
その想いが本人へ届くことはない。
アデラーンは、弟子の微笑みに小さく頷き返しただけだった。




