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第41話 再登録試験

 王都ローズガーデン冒険者ギルド。


 訓練場には、多くの冒険者たちが集まっていた。


 先ほど受付で判明した事実。


 ――元金ランク冒険者、セリーヌ・ブランシュ。


 その再登録試験を一目見ようと、多くの視線が訓練場へ注がれていた。


 受付嬢が一人の男を紹介する。


「元金ランク冒険者の再登録試験となりますので、試験官は当支部所属の金ランク冒険者が務めます」


 ゆっくりと前へ歩み出たのは、一人の壮年の剣士だった。


 鍛え抜かれた体躯。


 幾多の死線を潜り抜けてきた者だけが持つ風格。


 腰には使い込まれた長剣が下がっている。


「金ランク冒険者、ガレスだ」


「試験官を務めよう」


 セリーヌは静かに一礼した。


「よろしくお願いします」


 二人は木剣を受け取り、向かい合う。


 ガレスはセリーヌの構えを見た瞬間、表情を引き締めた。


(隙がない……)


(なるほど、これが元金ランクか)


 開始前から、その実力の片鱗を感じ取っていた。


「始め!」


 開始の合図と同時に、ガレスが地を蹴る。


 鋭い踏み込み。


 並の冒険者なら反応すら許さない一撃。


 しかし――


 コンッ。


 乾いた音が一つ響いた。


 一瞬だった。


 ガレスの木剣は高く宙を舞い、地面へ転がる。


 その喉元には、セリーヌの木剣がぴたりと添えられていた。


 勝負あり。


 訓練場は静まり返る。


「……え?」


「終わったのか?」


「今、何が起きた?」


「金ランクが……一瞬で?」


 誰一人として、その一太刀を見切ることはできなかった。


 ガレスは苦笑しながら両手を上げる。


「参った」


「完敗だ」


 セリーヌは木剣を下ろし、深々と頭を下げた。


「ありがとうございました」


 ガレスは穏やかに笑う。


「技量、礼節、ともに申し分ない」


「元金ランクに相応しい実力だ」


 受付嬢は登録簿へ判を押した。


「実技試験終了」


「元金ランク冒険者」


「セリーヌ・ブランシュ」


「再登録を正式に受理いたします」


 その宣言と同時に、訓練場は大きなどよめきに包まれた。


「金ランクが一瞬で負けた……!」


「やっぱり本物だったのか!」


 その時だった。


 一人の中年冒険者が、セリーヌの顔を見つめたまま目を見開く。


「お、おい……!」


「あの人、知ってるぞ!」


 周囲の冒険者たちが一斉に振り返る。


「知ってるのか?」


「ああ!」


「あの人は――」


「魔剣のセリーヌだ!」


 一瞬、空気が変わる。


「魔剣のセリーヌ……?」


「聞いたことがある!」


「見たこともない魔法剣で、魔物の群れを一人で殲滅したっていう……!」


「黒い魔力を剣にまとわせて戦うって噂の!」


 別の冒険者が興奮気味に叫ぶ。


「おい!」


「あの綺麗な顔に騙されるなよ!」


「昔、一緒に依頼を受けたことがある!」


「魔物の大群に囲まれても、一歩も退かなかった!」


「本気になったら、とんでもなく強いぞ!」


 周囲から驚きと感嘆の声が次々と上がる。


 当のセリーヌは困ったように苦笑した。


「そ、そんなに大げさじゃありませんよ……」


 少し離れた場所では、アデラーンが静かに目を細めていた。


(立派になったな)


 木剣を握ることすらおぼつかなかった幼い少女。


 転び、泣き、それでも毎日剣を振り続けた弟子。


 その積み重ねが、今こうして多くの人々に認められている。


 師として、それ以上に誇らしいことはなかった。


 こうして――


 元金ランク冒険者セリーヌ・ブランシュ。


 その名は、再び冒険者ギルドへ刻まれたのだった。

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