第40話 青銅ランク
王都ローズガーデン。
大陸冒険者協会ローズガーデン支部。
受付へ案内されたアデラーンは、登録用紙を書き終え、受付嬢から冒険者制度について説明を受けていた。
「では、冒険者登録についてご説明いたします」
受付嬢は一枚の資料を机へ広げる。
「こちらが冒険者証です」
「身分証明書を兼ねており、依頼の受注、報酬の受け取り、等級の管理など、すべてこの冒険者証で行います」
アデラーンは真剣な表情で頷く。
「なるほど」
「依頼は掲示板、または受付で受注できます」
「内容は採集、討伐、護衛、運搬など様々です」
「依頼を達成すると報酬が支払われ、実績を積むことで等級が昇格します」
「規約違反や依頼放棄を繰り返した場合は、降格や資格停止となることもございます」
「そういう決まりなのか」
受付嬢は微笑みながら説明を続けた。
「そして冒険者の等級ですが――」
「初めて登録される方は、皆様青銅ランクからのスタートとなります」
一瞬、受付が静まり返る。
「えーーーーっ!!」
セリーヌの大きな声がギルド中へ響き渡った。
受付嬢はびくりと肩を震わせる。
「せ、セリーヌ様?」
「先生が青銅ランクなんて、おかしいです!」
「先生は金ランクからですよ!!」
受付嬢はぽかんと口を開けた。
「……はい?」
何を言われたのか理解できない。
初登録の冒険者は、例外なく青銅ランク。
それは大陸冒険者協会が定めた規則である。
「申し訳ございません」
「初登録の方は、皆様青銅ランクからとなります」
「協会の規則ですので……」
「そんなぁ……」
セリーヌは目に見えて肩を落とした。
一方、アデラーンは落ち着いた様子で頷く。
「決まりなら従おう」
「積み重ねれば、いずれ上がる」
受付嬢は内心ほっと胸を撫で下ろした。
(こちらの方は、とても常識的な人なのに……)
(どうして隣の方はいきなり金ランクなんて言い出したんでしょう……)
やがて受付嬢は気を取り直し、もう一枚の書類へ目を通した。
「それでは次に、セリーヌ様のお手続きを――」
名前を確認した、その瞬間だった。
「……え?」
受付嬢の手が止まる。
もう一度書類を見返す。
そして目を大きく見開いた。
「セ、セリーヌ・ブランシュ様……?」
「はい」
受付嬢は慌てて登録記録を確認する。
間違いない。
そこに記されていたのは――
元金ランク冒険者
思わず息を呑む。
「えっ……!」
「せ、先日引退された、元金ランク冒険者セリーヌ・ブランシュ様ですか!?」
その一言に、周囲の冒険者たちが一斉に振り返る。
「元金ランクだって?」
「本物か?」
「まだあんなに若いじゃないか!」
ギルド内が一気にざわめき始めた。
受付嬢は慌てて姿勢を正す。
「し、失礼いたしました!」
「セリーヌ様は再登録となりますので、等級確認を兼ねた実技試験を受けていただきます」
「分かりました」
セリーヌは静かに頷く。
その横でアデラーンは不思議そうに首を傾げた。
「金ランクとは、そんなに珍しいものなのか」
セリーヌは苦笑しながら小さく笑う。
「先生が規格外すぎるだけですよ」
こうして二人は、実技試験が行われる訓練場へ向かう。
元金ランク冒険者セリーヌ・ブランシュ。
その実力が、再び冒険者ギルドで証明されようとしていた。




