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第28話 騎士団修練場

 翌朝。


 王国騎士団本部。


 広大な修練場には、朝早くから張り詰めた空気が漂っていた。


 前日の夕刻。


 団長アーサーは騎士団幹部へ召集をかけていた。


「明朝、修練場へ集合」


 伝えられたのは、それだけ。


 詳細は一切明かされなかった。


 その命令により集められたのは、王国騎士団の中核を担う二十七名。


 団長。


 副団長。


 近衛隊長。


 六人の師団長。


 六人の副師団長。


 十二人の選抜大隊長。


 いずれも王国騎士団を代表する実力者であり、それぞれが部下へ剣術を教える立場にある者たちだった。


 騎士たちは互いに顔を見合わせる。


「団長自ら召集とは珍しいな」


「何か重大な任務か?」


「魔物の大発生でもあったのか?」


 ざわめく修練場へ、アーサーが姿を現した。


 その後ろには、アデラーンとセリーヌが静かに歩いてくる。


 見慣れない二人に、騎士たちの視線が集まった。


「団長」


「本日の訓練内容をご説明ください」


 副団長が問い掛ける。


 アーサーは頷き、二人を前へ促した。


「紹介しよう」


「こちらは、ベルフォン村に古くから伝わる魔剣流の継承者」


「宗家、アデラーン・グランディス」


「そして、その一番弟子にして師範代」


「セリーヌ・ブランシュだ」


「今日から、この二人には王国騎士団の剣術指南役を務めてもらう」


 一瞬、修練場が静まり返る。


 しかし、次の瞬間。


 大きなどよめきが起こった。


「剣術指南役だと?」


「魔剣流?」


「聞いたこともない流派だ」


「ベルフォン村の地方流派じゃないか」


「しかも女が師範代?」


「団長、冗談ですよね?」


 失笑する者まで現れる。


 アーサーは騒ぐ騎士たちを静かに見渡した。


「静まれ」


 その一言だけで、修練場は水を打ったように静まり返る。


 アーサーはゆっくりと口を開いた。


「確かに魔王は討たれた」


「世界は平和を取り戻した」


「だが、その平和が永遠に続く保証はどこにもない」


 誰も口を開かない。


「平和な時代ほど、人は剣を鈍らせる」


「お前たちは日々鍛錬を積んでいる」


「しかし、生死を懸けた実戦でしか磨けないものは、確実に失われつつある」


 修練場は静寂に包まれた。


「私は、このままでは王国騎士団は弱くなると判断した」


「だから剣術指南役を招いた」


 アーサーはアデラーンへ視線を向ける。


「二人の実力は、この私が保証する」


 しかし、その言葉にも納得できない者がいた。


 第三師団長が一歩前へ出る。


「団長」


「失礼ながら、そのお言葉だけでは納得できません」


「無名の地方流派から学ぶ理由がありません」


 副団長も腕を組みながら続けた。


「我々は皆、王家御用達にして王国騎士団正式剣術――アルベール流を修めた騎士です」


「そのような我々が、聞いたこともない地方流派から教えを受ける必要があるのでしょうか」


 周囲の騎士たちも次々と声を上げる。


「そうだ!」


「まずは実力を見せてもらおう!」


「剣術指南役を名乗る以上、我々を納得させてもらいたい!」


「口だけでは、団長のお言葉でも信じられません!」


 挑戦的な視線がセリーヌへ集中する。


 アデラーンは静かにセリーヌを見た。


 その目には、何の心配もない。


「行ってこい」


 短い一言。


 セリーヌは力強く頷いた。


「はい、先生」


 そう言って一歩前へ踏み出す。


 魔剣流の実力を証明する時が来たのである。

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