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第24話 道場破りの日々

 最初の道場破りから数日。


 王都では少しずつ魔剣流の噂が広まり始めていた。


 ――王都に無名の流派が現れた。


 ――師範代は若い女性。


 ――しかも、とてつもなく強いらしい。


 その噂を聞きつけ、毎日のように道場破りが訪れるようになった。


「頼もう!」


「腕試しをお願いしたい!」


「魔剣流の実力、見せてもらおう!」


 相手は様々だった。


 他流派の剣士。


 冒険者。


 傭兵。


 腕に覚えのある者たちが、次々と門を叩く。


 迎え撃つのは、いつもセリーヌだった。


 礼を交わし、木剣を構える。


 勝負は一瞬。


 一のいちのけん――崩剣ほうけん


 二のにのけん――返月へんげつ


 基本二型だけで勝負は決まる。


「……参った」


「噂は本当だったか」


「魔剣流、恐るべし」


 挑戦者たちは潔く敗北を認め、一礼して帰っていく。


 それでも、不思議なことが一つあった。


 誰一人として、セリーヌの正体に気付かなかったのである。


 元金ゴールドランク冒険者セリーヌ。


 その名は王都でも知られていた。


 しかし、知っているのは冒険者ギルドの職員や高ランク冒険者が中心であり、一般の市民や他流派の剣士が顔まで知っていることは少なかった。


 何より、つい先日まで第一線で活躍していたゴールドランク冒険者が引退し、無名の剣術道場で師範代を務めているなど、誰一人として想像すらしなかったのである。


 だからこそ、人々は目の前の女性を「魔剣流の強い師範代」としか認識していなかった。


 しかし。


 翌日になっても。


 その翌日になっても。


 入門を希望する者は、一人も現れなかった。


 夕暮れ。


 門を閉めながら、セリーヌは静かに口を開く。


「先生」


「皆さん、魔剣流の強さは認めてくださっています」


「それなのに、どうして誰も入門しないのでしょう」


 元金ゴールドランク冒険者として、多くの強者を見てきた。


 強ければ自然と人は集まる。


 セリーヌは、そう思っていた。


 アデラーンは静かに微笑む。


「冒険者と道場は違う」


「冒険者は依頼を受ける仕事だ」


「強ければ依頼は集まる」


「だが道場は、人に人生を預けてもらう場所だ」


 セリーヌは黙って耳を傾ける。


「昨日できたばかりの道場へ、大切な弟子入りを決める者は少ない」


「まずは魔剣流という名を知ってもらうこと」


「そして信頼を積み重ねることだ」


 その言葉に、セリーヌは小さく頷いた。


「なるほど……」


「道場は、冒険者とは違うんですね」


「ああ」


「焦る必要はない」


「一歩ずつ積み重ねればいい」


 セリーヌは空になった道場を見渡し、力強く頷く。


「はい!」


「私も先生と一緒に頑張ります!」


 夕日に照らされた魔剣流道場には、まだ門下生の姿はない。


 それでも師弟は信じていた。


 積み重ねた努力は、いつか必ず未来へ繋がることを。

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