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第21話 開門

 翌朝。


 雲一つない青空が王都ローズガーデンを包んでいた。


 道場の門には、新しい看板が掲げられている。


 ――魔剣流道場。


 師ロランから受け継いだ流派が、王都で新たな一歩を踏み出す日だった。


 アデラーンは看板を静かに見上げる。


「ようやく始まるな」


「はい!」


 セリーヌも嬉しそうに頷いた。


「きっと今日はたくさん来ますよ」


「王都ですから!」


 二人は稽古場を掃き清め、木剣を並べ、門を開く。


「本日より、魔剣流道場を開門する」


 静かな宣言だった。


 やがて人々が道場の前を行き交い始める。


「あれ、新しい道場だ」


「魔剣流?」


「聞いたことないな」


「どこの流派だ?」


 足を止める者はいる。


 看板を眺める者もいる。


 しかし――。


 誰一人として門をくぐろうとはしなかった。


 午前が過ぎる。


 昼になる。


 午後になる。


 そして夕暮れ。


 セリーヌは門の前から通りを見つめ、小さく肩を落とした。


「……誰も来ませんね」


 アデラーンは穏やかに頷く。


「初日だからな」


「そんなものだ」


「焦る必要はない」


 その落ち着いた声に、不思議と焦りは感じられなかった。


 師ロランも昔、同じようなことを言っていた。


 ――信頼は、一日では築けん。


 ――毎日の積み重ねが、人を呼ぶ。


 アデラーンは静かに道場の看板を見上げる。


「俺たちは、俺たちの剣を貫けばいい」


「いつか必ず、この剣を求める者は現れる」


 セリーヌはその横顔を見つめ、力強く頷いた。


「はい!」


「私も先生と一緒に頑張ります!」


 アデラーンは小さく微笑む。


「ああ」


 こうして王都ローズガーデンに開かれた魔剣流道場。


 その記念すべき初日は――


 門下生、ゼロ。


 それでも師弟は、未来を信じて歩み始めるのだった。

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