第19話 新魔剣流道場
店主の案内で、二人は王都の一角へやって来た。
住宅街から少し離れた静かな場所。
そこには、立派な木造の道場が建っていた。
「こちらになります」
門をくぐると、広々とした庭が目に入る。
素振りや走り込みができる十分な広さ。
建物へ足を踏み入れると、磨き上げられた板張りの稽古場が広がっていた。
陽の光が差し込み、木の香りが漂う。
「以前はバルディア流道場として使われておりました」
「道場主様がご高齢のため引退され、そのまま売りに出された物件です」
店主は順番に案内していく。
「こちらが武器庫になります」
木剣。
槍。
木槍。
鍛錬用の重り。
稽古道具の多くは、そのまま残されていた。
「裏には鍛錬用の庭もございます」
さらに案内された裏庭は、組み手や武器の稽古を行うには申し分ない広さだった。
そして最後に、一枚の扉を開ける。
「こちらが居住区になります」
食堂。
台所。
居間。
書斎。
寝室は二部屋。
浴室まで備えられている。
「以前の道場主様がお住まいでしたので、生活に必要な設備は一通り揃っております」
アデラーンは静かに建物を見渡した。
床。
柱。
天井。
稽古場。
どれも丁寧に手入れされている。
「……いい道場だ」
ぽつりと漏らした一言。
その言葉には、師ロランから受け継いだ魔剣流を未来へ繋ぎたいという想いが込められていた。
セリーヌも嬉しそうに微笑む。
「先生」
「ここなら、きっと素敵な道場になります」
アデラーンも静かに頷いた。
「ああ」
「ここから始めよう」
店主は少し申し訳なさそうに口を開く。
「ただ、その分、お値段は少々張りますが……」
アデラーンは最後まで聞かず、懐から革袋を取り出した。
机の上へ置く。
ずしり、と重い音が響いた。
店主は中を確認した瞬間、息を呑む。
「こ、これは……!」
そこに入っていたのは、魔王討伐の功績として王国から授けられた莫大な報奨金だった。
「これで足りるか」
店主は何度も頷く。
「はい!」
「十分でございます!」
「ありがとうございます!」
契約はその場で成立した。
こうして王都ローズガーデンに、新たな魔剣流道場が誕生した。
師ロランから受け継いだ剣は、新たな場所で、再び未来へ向かって歩み始めるのだった。




