第18話 物件探し
翌朝。
朝食を済ませた二人は、王都ローズガーデンの不動産屋を訪れていた。
魔剣流道場を開くためである。
「剣術道場として使える物件を探している」
アデラーンが用件を伝えると、店主は笑顔で頷いた。
「承知いたしました」
「道場向きの物件でしたら何件かございます」
「少々お待ちください」
店主が帳簿を取りに奥へ向かう。
その間。
セリーヌは隣に立つアデラーンをちらりと見上げた。
(先生と物件探し……。)
(なんだか夫婦みたい……。)
思わず頬が緩む。
(い、いやいや!)
(昔は親子同然だったけど……。)
(私はもう二十二歳なんだから!)
(先生も少しくらい意識してたり……。)
一人で勝手に想像し、顔を真っ赤にする。
そこへ店主が戻ってきた。
「お待たせいたしました」
店主は二人を見比べ、にこやかに微笑む。
「ご夫婦で道場を開かれるんですか?」
その一言で、セリーヌの思考が止まった。
(ふ、夫婦……!?)
(えぇぇぇぇっ!?)
心臓が飛び出しそうになる。
恐る恐るアデラーンを見る。
(先生……。)
(なんて答えるんですか……。)
アデラーンはいつも通り真顔だった。
「違います」
「俺の弟子です」
迷いのない即答だった。
セリーヌは固まる。
(そ、そんなに即答しなくても……。)
(ちょっとくらい考えてくださいよぉ……。)
一人で肩を落とす。
そんなセリーヌにはまったく気付かず、アデラーンは店主へ向き直った。
「それで、物件を見せてもらえるか」
「もちろんです」
店主は笑顔で頷く。
「実は、ちょうど良い物件が一件ございます」
「以前はバルディア流の道場として使われていた建物です」
「道場主様がご高齢のため引退され、そのまま売りに出されました」
「稽古場はもちろん、武器庫や鍛錬用の庭もございます」
「さらに道場に隣接した居住区も残っておりますので、そのまま生活していただけます」
アデラーンは静かに頷いた。
「居住区もあるのか」
「はい」
「以前の道場主様がお住まいでしたので、生活に必要な設備も一通り揃っております」
セリーヌの胸が高鳴る。
(先生と同じ屋根の下……。)
(また一緒に暮らせるんだ……。)
自然と笑みがこぼれた。
店主は案内の準備を整える。
「それでは、ご案内いたします」
こうして二人は、新たな魔剣流道場となる運命の物件へ向かうのだった。




