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第7話 兄妹弟子

 セリーヌが魔剣流道場へ入門してから一年。


 魔物によって大きな被害を受けたベルフォン村にも、少しずつ活気が戻り始めていた。


 焼け落ちた家々は建て直され、人々は再び畑を耕し、子どもたちの笑い声が村へ響くようになる。


 それとともに、魔剣流道場にも少しずつ門下生が戻ってきた。


 朝になると、子どもから大人まで十数人の門下生が道場へ集まる。


「礼!」


 アデラーンの声が響く。


 一斉に頭を下げる門下生たち。


 掃除に始まり、礼法、素振り、走り込み、組み手。


 魔剣流の鍛錬は今日も厳しかった。


 その中でも、一際目立つ二人がいた。


「先生、おはようございます!」


 元気よく駆け寄ってきた少年。


 その後ろから、落ち着いた足取りで歩いてくる少女。


 二人は双子の兄妹。


 兄のリュカと、妹のリリアである。


 二人は幼い頃から魔剣流へ通う門下生であり、アデラーンが特に目を掛けている弟子だった。


「おはようございます、先生」


「おはよう」


 アデラーンは穏やかに頷く。


「今日もよろしくお願いします!」


「うむ」


 リュカは元気いっぱい。


 リリアは礼儀正しく落ち着いている。


 性格は正反対だったが、剣の腕は同じように優れていた。


 アデラーンは二人をセリーヌの前へ呼ぶ。


「紹介しよう」


「兄弟子のリュカと、兄弟子……いや、姉弟子のリリアだ」


 二人は笑顔で手を振る。


「よろしく!」


「よろしくお願いします」


 セリーヌも慌てて頭を下げた。


「セリーヌです」


「よろしくお願いします!」


 その日から三人は一緒に稽古するようになった。


 朝は掃除。


 礼法。


 素振り。


 崩剣。


 昼は走り込み。


 夕方は組み手。


 休憩時間には村を駆け回って遊ぶこともあった。


 年の近い仲間ができたことは、セリーヌにとって何より嬉しかった。


 ある日の昼休み。


 アデラーンは村人から頼まれ、薪割りを手伝いに出ていた。


 その後ろ姿を、セリーヌは縁側からじっと見つめている。


「先生、今日もかっこいいなぁ……」


 思わず本音が漏れた。


 その瞬間。


 リュカとリリアは顔を見合わせる。


「……なあ」


「うん」


 二人は同時に頷いた。


「セリーヌ」


「はい?」


「先生のこと、好きなんだろ?」


「えっ!?」


 セリーヌの顔が一瞬で真っ赤になる。


「ち、違います!」


「そ、そんなこと……!」


 慌てて否定するものの、目は泳ぎっぱなしだった。


 その様子を見て、リュカは苦笑する。


「分かりやすすぎるって」


 リリアもくすりと笑った。


「先生は全然気付いていませんけどね」


 セリーヌは両手で顔を隠し、その場にしゃがみ込む。


「もう……恥ずかしい……」


 双子は微笑み合う。


 この時から二人は、セリーヌの初恋を密かに応援することを決めた。


 もっとも――。


 当のアデラーンだけは、その想いに気付くことは、最後までなかったのである。

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