~第12幕~
ドロップアウト第4章の四国四天王編の収録があった時はクリスタルエデンのムーンライト買収をめぐる騒動やらヴィベックスのGGGやポンズを巡る騒動に巻きこまれてドラマ自体がなくなるのでないかと誰もが心配した。
ところが逆に功を奏したと言ったほうがいいだろう。
ムーンライトとは業務提携を結んで業界関係者も世間の一般層も唸らせる。
塩塚萌々子というキャラクターを演じきったポンズは自身のアイデンティティを告白し芸能活動を継続すると宣言したことで一気に国民的スターの仲間入りも。下手したら大打撃を受けて無くなるのではないか? と噂されたヴィベックスも見事に息を吹き返した。稼ぎ頭のGGGはなくなっても、新星アイドルユニット結成を目論む企画を民放テレビ局と手を組んで主催。音楽プロデューサーとして「うっせぇよ」で名を馳せるミヲタニアンが出演して、これがウケてこの番組は盛り上がる。そしてそこで誕生したアイドルユニットはGGGやハロー世界征服と肩を並べるほどのアーティストとなり、Jポップ業界を席巻する。
「山里、こうなると思っていた?」
「こうなるって?」
「いや、やばかったじゃないの。GGGがいなくなってさ。私もどうするべきか考えたわよ」
「斧崎さんはクリスタルエデンに友達はいるのかな?」
「特にコレってひとは……」
「じゃあ作らないと。そっちはお笑い事業部でしょ。時代に取り残されるよ?」
「えっ!? どういうこと!?」
ヴィベックス本社。その一室で幹部の山里と斧崎は語らう。
「演技指導で大変にお世話になったわね。あのコがやまとなでしこちゃんに出演するキッカケをくれたのも貴女って伺っているわ。感謝しないと」
同じ時に華崎はある大物女性タレントと話す。
「へへへっ。ネットで芸能界四天王と謳われる華崎様に言われるとは光栄です」
「あなたもそこに入れるぐらいじゃなくて? いまの自分に満足しているの?」
「正直ね……嫌いなのは嫌いですよ? 人使いが荒いしさ。でも、あのろっくタケシさんが軍団で業界を牽引していた時よりももっと凄いのをみせてくれそうで。あの男は」
「ふうん。まぁ。いいわ。でもウチのコをどうか宜しく。貴女ならば信頼できると私はみているわ」
「アザッス。ははは。それにしても華崎さんはポンちゃんのことをだいぶ大事にされていますなぁ。もしかして……じつの子とか?」
「違うけどね。でも、そうだって思えるぐらいに彼女は可愛い。大好き」
「あ、そういえば華崎さんも冬に例の大会に来るって?」
「ええ。貴女にも伊達君にも恩があるから。仇で討つ形になるけど、容赦なんかしない。伊達君にもよく伝えてください」
「へい。一緒に業界を盛り上げましょう」
華崎はクリスタルエデンの近藤勇美としかり握手を交わす。
信じられないかもしれないが、こう言った一連の出来事があったなかで第3回スタンドアップスピーチヒーローは開催された。
第2回まではフジサンテレビが主催の大会であったが、今大会からクリスタルエデン主催となる。フジサンテレビはその支援スポンサーに降格したのである。もっとも、放送自体はフジサンテレビが担うもので変わりないのだが。それでもこの世界の常識は変わりつつあった。
優勝賞金1億円。
配信業でカリスマとなっている玄姫やすむに光坂桜。大物音楽プロデューサーYASHIKI。ミスターリアルな悪役の五味秀一から人気怪談師の篠田林檎。お笑い界からはちぇんそーまんずデンジローが出場と言うことでここでも話題に欠けることはなかった。
審査を務めるのは清田社長と綺羅めくるに西瓜亭羊の3人。漫才王の方でも審査を務める業界の大御所が揃う。そして大会のMCを務めるのは漫才王チャンピオンとなって国民的お笑いスターのもふもふ王国の2人。役者が揃った格好の舞台。その優勝者は革命を業界にもたらすことに。
それは新たな時代の幕開けのまえの幕開けといっていいもので――
あれから随分経って今年の12月。喫煙所と右往左往で盛り上がった漫才王になろうGP決勝が開催&放送されるのと同時にクリスタルエデンもとい伊達賢治が手掛ける奇天烈芸能賞レース「メディア王に誰が笑う」が開催&放送された。出場者はその当日までシークレットとされたが、噂は既に広まっていた。
第1試合。伊達賢治V.S.田口エンタメ野郎。
なんと主催者が初戦で登場。しかも対戦相手は賢治を根から嫌うグチエンだ。それはもう酷い言葉をグチエンが連発するものの、賢治はウィスキーを片手に飄々と田口の猛攻をかわしながら彼を弄るジャブを入れる。そもそも投票形式の対決であれば結果は見えていたものかもしれない。賢治の勝ち。
第2試合。ろっくタケシV.S.藤崎武来庵。
知る人ぞ知る芸能界のドン、武来庵と誰しもがテレビ等で顏をみたことがあるだろう芸能界大御所のトップ。これほど注目の一戦はないと思われたが、タケシという男は只者ではなかった。
『変なおじさんだよ! 変なおじさん!!』
故人である篠原ケンのコント引用。急に紙パンツ一丁になってシェ~のポーズで武来庵を両手で指さす。この大会は自分が出場すれば自分が優勝するぐらいのものだと思っていた。でも、その認識が甘かった。だけど負けてしまってもいい。ここで彼は何かを学べたと実感できたのだ。タケシの勝ち。
第3試合。綺羅めくるV.S.華崎鮎美
前回の初代王者が2連覇を目指して出場。対するはメディアでの露出が珍しいヴィベックス社長。めくるの毒舌ときたらそれはもう鋭く威力のあるものだったものの、華崎にはまるで効かない。彼女を達観して見下ろし、アドバイスなのか叱咤なのか分からないきつい言葉を華崎はカウンタージャブを入れるようにして入れた。華崎の勝利。まさかの展開だ。
第4試合。鳴沢樹V.S.中下すず
クリスタルエデン三銃士のホープがここで激突。しかし元々仲が良いとされる2人が悪口など言い合うはずもない。
「あぁ~オシャレなカフェいきたいなぁ~!」
「なんでよ! アンタは野良猫でしょうが! 弁当屋の裏が天国でしょうが!」
「いや! 野良猫と違う! 化け猫! いや! 私自身が化け猫でもないわ!」
「あぁ~素敵な彼氏と夜景を眺めてまったりしたいなぁ~」
「なんでよ! アンタはチーマーとコンビニ前で厳つくたむろでしょうが!」
もはや漫才だ。元々はレッドカーペット社長と虚・ミゼラブル社長が出場する予定だったらしいが、武来庵の出場より辞退することになったらしい。そういうワケでこの2人の出場となったようだが。勝者は鳴沢。
準決勝・第1試合。伊達賢治V.S.ろっくタケシ。
出場から2人とも何故かフンドシ一丁で席に座る。しかし試合のゴングが鳴ると同時に席から観客席に向かって躍りでる。
片方が「ズンチャカ! ズンチャカ!」と言っている間に賢治もタケシも自ら得意としている一発芸を披露。しかも、それも相手のことを弄るもので。本当かどうか定かではないが打ち合わせなどは一切なくこの展開になったらしい。でも、賢治の手には相変わらずウィスキーが握られていたし、実はマッチョな肉体美も好印象だったのだろうか。賢治が決勝進出を決めた。
というかこの大会って何の大会なのか?
ネットではそんな声が溢れだしていた。
準決勝・第2試合。華崎鮎美V.S.鳴沢樹。
鳴沢は思ったような形ではないが、憧れのろっくタケシと対面できるっていうことでこの試合に張りきって臨もうとした。しかし肝心の準決勝で賢治が勝った為にその夢も潰えることに。それでもその怨みを晴らしてやろうと気持ちを改め臨むも、元々腹黒さに長けている華崎にとって動揺を隠し持った鳴沢は敵なんかでなかった。華崎の勝ち。
こうして決勝の伊達賢治V.S.華崎鮎美。
その幕があがる――
『メディア王に誰が笑う』
https://ncode.syosetu.com/n8999jw/
話の終盤にでてきた番組の詳細はこちらの拙作で分かります(笑)
「芸能界四天王」という題材で書いた本作本章。ドロップアウト四国四天王決戦のオフショットみたいなものを書いていたところもありますが、この「芸能界になろう」という作品ないしプロジェクトにおいても大事なポイントになるところだったかなぁと思います。次号で本章最終話です(#^.^#)m9ドーン!!!!




