繋がる点と点
涼夏が目を覚ますと、心配そうに千花が覗き込んできた。
「よかった……目が覚めた?」
涼夏はベッドからゆっくり身体を起こすが、まだ頭ははっきりせず、ぼんやり一点を見つめる。
「急に倒れたんだよ。大丈夫? どこか痛い?」
「大丈夫。ありがとう」
そう答えると、千花は安心したように微笑んだ。
涼夏は再び自分の白い手を見つめ、ゆっくり呼吸しながら、頭の中を整理し始める。
しばらくすると、千花を見つめ静かに口を開いた。
「ねぇ、千花」
「うん。……あの場所だったんでしょ」
何を言おうとしているか、千花はもう分かっているようだった。
「話せるところだけでいいから」
千花が涼夏を安心させるように手を握り、優しく語りかける。
「……うん。まだ断片的な部分もあるけど、聞いてほしい」
涼夏は一度静かに息を吸い込み、あの夏祭りの夜に起きた出来事を語り始めた。
——————
一方その頃、男子三人はそれぞれ家へ戻っていた。
千花から、「涼夏が目を覚まし今日はうちに泊まる」と、連絡が入り、宗介はようやく胸をなで下ろした。
その時、一階から母の声が聞こえた。
「宗介ー! 二十四時間テレビ始まったよー!」
宗介は階段を下り、一階のリビングへ向かった。
「宗介、三十一日の夏祭りは行くのかい?」
洗濯物を畳みながら、母が尋ねてきた。
(あっ……忘れてた。それどころじゃなかったから)
「いや、多分行かないかな」
「あら、そうなの? 毎日地元の友達と出かけてるから、てっきり行くものだと思ってた」
(そうだよ。でも別に好きで毎日会ってるわけじゃないけどな……)
「でも、気が変わったらこれ着ていきなさい」
母が取り出したのは、紺色の甚平だった。
「お父さんのだけど、宗介ならちょうどいいと思うよ」
「分かった」
宗介はそれを受け取る。
ふと、今日歩いた山道のことが頭をよぎった。
「なぁ。夏祭り会場の手前の分かれ道あるじゃん。右が会場で、左に行くと獣道みたいな山道になるところ」
「あるわね」
「あの道って、最後どこにつながってるの?」
すると母は、洗濯物を畳んでいた手を止め、少し表情を変えた。
「えっ、あそこは入っちゃ駄目よ。私有地なんだから」
「えっ、そうなの?」
「そうよ」
「誰の土地か知ってる?」
「えーっと……」
(まぁ、知らないよな)
「たしか前市長さんだったかしら」
(知ってるんかい……! さすが田舎の情報網)
宗介の母は大の噂好きだった。市役所の職員並みに町の新情報を仕入れてくるし、特に仲も良くない同級生の近況報告も、聞いてもいないのに話してくる。
すると、母は思い出したように話を続けた。
「そうそう。宗介が中学二年生の頃だったかしら。行方不明になった女の子、いたでしょう?」
(はい。毎日その子の死体探しをしています)
「あの子を捜索する際に、警察がさっき宗介が言った場所も捜索させてほしいって前市長さんに頼んだらしいんだけど、断られたんだって」
「えっ……」
「おかしいでしょう? 女の子が一人いなくなってるのに協力しないなんて」
「だから当時はね、『前市長さんが殺して、あそこに埋めたんじゃないか』なんて噂も流れてたのよ」
「まぁ、あくまで噂だけどね。前市長さんはいい人だったし、そんなことする人じゃないと思うけど」
「…………」
(噂好きにもほどがある……)
だが、その噂の中には見過ごせない情報があった。
前市長。私有地。八年前の事件。点と点が、⾳を⽴てて繋がっていく。
宗介は急いで⾃室へ戻ると、すぐに三⼈へ連絡を⼊れた。




