95ページ
人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
凛の学校。
雫たちは放課後の教室を訪れた。
そこには、窓際に座る一人の少女。
佐倉凛。
だが異様だった。
誰も彼女を見ていない。
隣を人が通っても、存在に気づかない。
「え……」
雫は凍りつく。
凛は苦しそうに笑った。
「やっぱり、見えるんだ」
玲が静かに近づく。
「いつからだ」
「三日前くらい」
最初は小さな違和感だった。
友達が名前を呼ばなくなる。
教師が出席を飛ばす。
そして昨日。
母親が凛を見て、こう言ったらしい。
『……誰?』
雫の胸が締めつけられる。
存在を忘れられる恐怖。
それは死ぬより残酷かもしれない。
凛は震える声で言う。
「私、このまま消えるのかな」
雫はすぐ答えた。
「消えない」
その言葉は、自分自身へ向けた願いでもあった。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




