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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
「……玲?」
雫はぼんやりと目を開けた。
目の前には、泣きそうな顔の玲がいる。
なのに。
胸の奥が妙に静かだった。
「大丈夫か」
玲の声。
優しい声なのに、どこか遠い。
雫は首を傾げる。
「……私たち、前から知り合いだっけ」
空気が凍った。
玲の表情が固まる。
透も息を呑んだ。
書庫主の声が低く響く。
『代償完了』
玲は何か言おうとして、言葉を失う。
雫の中から消えたのは、“玲との始まり”だった。
初めて時雨堂で会った日。
交わした言葉。
救われた感情。
全部。
玲は震える拳を握りしめる。
だが無理やり笑った。
「……ああ、知り合いだ」
その笑顔が痛々しい。
雫は胸に小さな違和感を抱えたまま、目を伏せた。
どうしてだろう。
この人を見ていると、泣きたくなる。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




