40ページ
人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
時雨堂へ戻ると、玲が一人で本を読んでいた。
雫は透の言葉を思い出す。
『玲も同じだ』
玲は顔を上げる。
「……会ったのか」
「透に聞いた」
玲の表情がわずかに曇る。
「お前には関係ない」
「あるよ!」
雫は思わず叫んでいた。
「私は知らないまま消えていくの!?」
静寂。
栞も黙っている。
やがて玲は小さく息を吐いた。
「……俺は、一回死んでる」
雫の時間が止まる。
「え……?」
「正確には、“存在を削られた”」
玲は窓の外を見る。
「だから俺には戸籍も過去もない」
雫は言葉を失う。
そんなことが、本当にあり得るのか。
玲は静かに笑う。
「透の言うことは半分正しい」
そして雫を見る。
「でも、それでも救われる命はある」
その瞳は悲しいほど優しかった。
その時。
雫の人生の本が、再び勝手に開く。
ページに新しい文章が浮かび上がる。
『彼女は近いうちに、“最悪の選択”をする』
空気が凍った。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




