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運命の栞  作者: あーちゃん


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35/150

35ページ

人はきっと、誰かに救われながら生きています。


大きな言葉じゃなくてもいい。

たった一言。

たった一つの優しさ。

それだけで、生きようと思える夜があります。


この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。


けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。


苦しみながらも誰かを想うこと。

忘れたくないと願うこと。

誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。


そんな、不器用で優しい人たちの姿です。


もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。

この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。


『時雨堂に、雪は降りつづく』


どうか最後まで、見届けてください。


その夜。


時雨堂で悠斗の本を確認すると、内容が変化していた。


『事故の日付が、一週間後へ移動』


雫は息を呑む。


「伸びただけ……?」


玲は静かに頷く。


「完全には防げてない」


雫は唇を噛む。


「そんな……」


栞が本を撫でながら言う。


「大きな運命ほど、修正力が強いの」


「修正力?」


「変えようとしても、別の形で戻ろうとする」


まるで運命そのものに意思があるようだった。


その時。


時雨堂の奥から、鈴の音が響く。


チリン――。


雫は振り向く。


本棚の間に、白いワンピースの少女が立っていた。


長い黒髪。


だが顔が見えない。


「……誰?」


少女は何も言わない。


ただ、雫を指差した。


そして。


『返して』


頭の中に直接声が響く。


次の瞬間、少女は消えた。


玲が険しい顔で呟く。


「……幻影が出始めたか」


「今の何!?」


栞は珍しく真剣だった。


「記憶を失いすぎた人間に現れる、“空白”よ」

最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。


この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。


誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。




全部を救いたい。

誰も傷ついてほしくない。


そう願っても、現実は簡単ではありません。


それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。


その小さな希望を、この物語に込めました。


雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。

そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。


人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。


もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。

それが、この作品にとって何よりの救いです。


あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。


本当にありがとうございました。

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