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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
その夜。
時雨堂で悠斗の本を確認すると、内容が変化していた。
『事故の日付が、一週間後へ移動』
雫は息を呑む。
「伸びただけ……?」
玲は静かに頷く。
「完全には防げてない」
雫は唇を噛む。
「そんな……」
栞が本を撫でながら言う。
「大きな運命ほど、修正力が強いの」
「修正力?」
「変えようとしても、別の形で戻ろうとする」
まるで運命そのものに意思があるようだった。
その時。
時雨堂の奥から、鈴の音が響く。
チリン――。
雫は振り向く。
本棚の間に、白いワンピースの少女が立っていた。
長い黒髪。
だが顔が見えない。
「……誰?」
少女は何も言わない。
ただ、雫を指差した。
そして。
『返して』
頭の中に直接声が響く。
次の瞬間、少女は消えた。
玲が険しい顔で呟く。
「……幻影が出始めたか」
「今の何!?」
栞は珍しく真剣だった。
「記憶を失いすぎた人間に現れる、“空白”よ」
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




