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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
黒い霧は、本を侵食していた。
触れたページが消えていく。
文字ごと。
人生そのものが。
「下がれ!」
玲が雫を庇う。
霧の中から、無数の声が響いた。
『忘れないで』
『助けて』
『怖い』
雫は耳を塞ぐ。
頭が割れそうだった。
栞が本棚へ手をかざす。
銀色の光が広がり、霧を押し返す。
だが完全には消えない。
「時雨堂が崩れ始めてる……」
玲が舌打ちする。
「透か」
その瞬間。
霧の奥に、人影が現れた。
神代透。
「だから言っただろ」
冷たい声。
「運命に触れ続ければ、全部壊れる」
雫は震えながら叫ぶ。
「なんでこんなことするの!?」
透の目が揺れる。
その瞳には、深い絶望があった。
「……もう誰にも、同じ思いをしてほしくないだけだ」
意味深な言葉を残し、透は闇へ消える。
静寂。
そして雫は気づく。
自分の中の“ある大切な記憶”が、また一つ消えていたことに。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




