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運命の栞  作者: あーちゃん


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29/150

29ページ

人はきっと、誰かに救われながら生きています。


大きな言葉じゃなくてもいい。

たった一言。

たった一つの優しさ。

それだけで、生きようと思える夜があります。


この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。


けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。


苦しみながらも誰かを想うこと。

忘れたくないと願うこと。

誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。


そんな、不器用で優しい人たちの姿です。


もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。

この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。


『時雨堂に、雪は降りつづく』


どうか最後まで、見届けてください。


夜。


時雨堂へ着くと、店内の空気が重かった。


玲が珍しく苛立っている。


「透が接触してきたのか」


雫はスマホを見せる。


栞はため息をついた。


「あの子、また余計なことを……」


「透って何者なの?」


沈黙。


やがて玲が低く言った。


「昔、時雨堂にいた人間だ」


雫は目を見開く。


「え……?」


「俺たちと同じ、“運命を読む側”だった」


だが透はある日、突然消えたらしい。


理由は――。


「人を救った結果、大切な人を失った」


空気が冷える。


玲は続ける。


「だからあいつは、運命改変を憎んでる」


雫は言葉を失った。


もし自分も、誰かを不幸にしているなら。


その時。


時雨堂の照明が一瞬消える。


バチッ――。


本棚が揺れた。


そして。


奥から、黒い霧のようなものが溢れ出した。


「なにこれ……!」


栞の顔色が変わる。


「“消滅”が始まってる……!」

最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。


この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。


誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。




全部を救いたい。

誰も傷ついてほしくない。


そう願っても、現実は簡単ではありません。


それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。


その小さな希望を、この物語に込めました。


雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。

そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。


人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。


もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。

それが、この作品にとって何よりの救いです。


あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。


本当にありがとうございました。

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